アメリカのある調査では、決まったパートナーがいる状態でも男性の20~40%、女性の20~25%は“浮気”を人生で1度以上は経験しているという。語弊を恐れずに言えば“一夜の過ち”はそんなに珍しいものではないということにもなる。独身でフリーであればなおさらだ。しかしながら今宵のお相手になる可能性を秘めた人物と“意気投合”しようとする場合、男性と女性では大きな認識のギャップがあることが最近の研究で指摘されている。
■“一夜の恋”をめぐる男女の認識の違い
“一夜の過ち”はよくお酒のせいにされる。酔った勢いで……というやつだ。しかし実際のところ、パートナーではない男女がどういった心理のプロセスを経てベッドを共にするのだろうか。“意気投合”するためにどんなことをしているのか、どんなことをすれば効果的であると思うのかについてのアンケート調査が行なわれている。
米・バックネル大学の研究チームが行動科学系ジャーナル「Human Ethology Bulletin」で発表した研究では、男子大学生168人、女子大学生280人にアンケート調査を行ない、知人の異性とロマンティックな関係を結びたい場合、どんな行動に出るのか、18の行動から選択形式で回答してもらい収集したデータを分析している。
男子学生が、女友だちと“意気投合”するために効果的であると考える行動は上位から次の通りだ。
●お酒を飲んで一緒に酔う。
●彼女のボーイフレンドの悪口で盛り上がる。
●ボディに触れる。
●スマホにメッセージを送る。
●一緒にパーティーに行く。
●いちゃつく。
●スナップチャットを共有する。
●性的な意味を込めてボディに触れる。
●密会する。
●笑顔を投げかける。
●一緒に踊る。
上記のような一緒になって盛り上がる行動が効果的であると男子学生は考えているのだか、実は女性にとってはかなり“お門違い”のものでもあるようだ。
一方で男女共に、異性の友人と関係を深めるために重要だと考えるのは上位から以下の通りだ。
●気配りをする。
●相手を持ち上げる。
●一緒の時間を過ごす。
●共感する。
●宿題を一緒にやる。
●問題解決に協力する。
●相手の友人とも仲良くする。
決して“酔った勢い”で関係が深くなるわけではなく、そして男性の側もよくよく考えればそうでないことに気づけることにもなる。
今回の調査は男女共に大学生という限定された対象だけであっただけに、まだまだ研究は初歩的な段階にあるといえるが、異性へのアプローチの仕方について男女の間に大きな違いがあることが指摘されることになった。関係を深めるのに本当に効果的なのは一緒に盛り上がることよりも、気配りと相手を思いやる行動が先にくるようである。
■多くの女性が“行きずりの恋”に後悔している?
その“一夜”が過ちであったのかそうではなかったのかは、ひとえに当人の心持ち次第だろう。
だが実際のところ女性は男性よりも“行きずりの恋”を後悔していることを最新の研究が指摘している。もちろんその場では“意気投合”して及んだ行為であるものの、女性のほうが後悔する確率が高いというのである。
ノルウェー科学技術大学と米・テキサス大学の合同研究チームが2016年12月に心理学系ジャーナル「Evolutionary Psychology」で発表した研究では、ノルウェーの大学生(19歳~37歳)263人に一番最近に体験した“行きずりの恋”に関する印象を調査している。
回答を分析した結果、定まったパートナーが相手ではない“行きずりの恋”に、女性の35%は後悔しているという実情が明らかになった。一方で男性で後悔しているのは20%に留まっている。
そして最近の“行きずりの恋”が楽しかったと回答しているのは女性の30%で、男性は50%以上にのぼっている。さらに興味深いのは、“行きずりの恋”の機会が訪れたものの断った場合、女性の80%が断ってよかったと考えており、男性で断ってよかったと考えるのはその半数の43%と男女で大きなギャップがあることが浮き彫りになった。
世界的に見ても性の解放が進んでいるといわれる北欧のノルウェーでこうも男女の認識にギャップがあるのはなぜか。研究チームのレイフ・エドワード・オッテセン・ケナヤ教授は、この男女のギャップは進化人類学的なものであると説明している。
生存戦略上、自分のDNAを確実に後世に残すという意味において男女差はないが、そのアプローチが男女では違ってくるのである。
男性において自分のDNAを残すための主要な戦略はできる限り多くの異性と性行為を行なうことに尽きる。男性にとっては“数”が重要であり、それゆえ“行きずりの恋”には戦略上絶好の機会となり、基本的には後悔する理由はない。
一方、生涯に出産できる子どもの数が限られている女性にとっては、自分の遺伝子を後世に確実に残すためには“優秀な個体”を産み育てるという戦略になる。生存競争において永くサバイバルできる子どもを産むためには、“行きずりの恋”であっても(あるからこそ)、相手の“クオリティ”を期待することになる。しかし一夜の恋のお相手にはそうそう立派な男性もいないことから(!?)、高い確率で後悔することになると説明できるのだ。
もちろん文明社会の中で暮らす我々にこれがそのままあてはまるわけではないが、進化人類学的にこうした性質を我々は今も受け継いでいるのだ。とすれば“酔った勢い”でことに及べば、女性においてはますます強く後悔しそうである。
■“一夜の恋”は6月に増える
1年の中で“一夜の恋”が格段に増える時期があるという。それは4、5、6月だ。
米大手出会い系サイト「OKCupid」は、ユーザーの“一夜の恋”が伴う出会いの数を示す年間データを公表している。それによれば“一夜の恋”が4、5、6月に多いことが浮き彫りになっている。この時期は、永続的な交流を前提とした出会いよりも、刹那的で享楽的な出会いを求める人が増える傾向があるということだ。やはり夏を前にして心が開放的になっているのだろうか。
あくまでもアメリカでの傾向ということにはなるが、大学生であれば5月前後から企業インターンシッププログラムに参加する者も多く、何かと前向きにチャレンジする気持ちになっているともいえる。
研究者によれば、やはり若い人の間でこの時期に環境の変化や新しいことにチャレンジする機会が増えることで、男女関係においても“冒険心”をより発揮できるのではないかと説明している。一方でバケーション休暇を取る人もこの時期に多く、全体的に時間的余裕のある人が増えることもその理由のひとつに挙げられる。
同社のケリー・クーパー氏によれば特に6月は1年の平均に比べて33%も“一夜の恋”を求めるユーザーが多くなるということだ。
そしてこの刹那的な新しい出会いを求める傾向は夏を過ぎ秋へ向かうほどに弱まり、男女関係でも長期的な交際を求めるようになるという。それだけ4、5、6月は特別な時期ということになる。
“一夜の恋”を“過ち”にするか“運命”にするかは人それぞれだが、出会いがなければ何もはじまらないことも事実だ。結果的に“行きずり”になるにせよ、男女関係のみならず個々の出会いを大切にしたいものである。
参考:「ISHE」、「SAGE Journals」、「OkCupid」ほか
文=仲田しんじ
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