リサイクルにまつわるよくある5つの誤解とは?

サイエンス

 ペットボトルなどのプラスチック製品は可能な限りリサイクルしたいものだが、現在の技術ではリサイクルを繰り返すと素材の品質が劣化する。しかし最近の研究で、理論上は無限にリサイクルできる新たな“夢の”プラスチックが開発されている。

■無限リサイクルが可能な夢のプラスチックを開発

 環境のプラスチック汚染、そしてマイクロプラスチック問題など、プラスチックにまつわる問題は喫緊の課題になっているが、科学者たちは遂に永久にリサイクル可能な夢のプラスチックを開発した。

 米カリフォルニア州のローレンス・バークレー国立研究所の研究チームは、まるでレゴブロックのように分解と再建が簡単にできる新たなプラスチックポリマーを開発したことを2019年4月に「Nature Chemistry」で発表している。

 プラスチックは用途に応じて色や硬さなどを変えるためにさまざまな添加剤などが加えられるが、こうした化学物質をリサイクルの過程で取り除くことができなければリサイクル後の品質が劣化する。もちろんコストをかけて入念な工程でリサイクルすればそれなりの品質のプラスチックに再生できるのだが、コスト高はリサイクルにとってその存在意義を揺るがす問題になる。

 研究チームは品質を劣化させることなく低コストでリサイクルが可能な画期的なプラスチックだ。研究チームはアミン(amine)にトリケトン(triketone)を組み合わせることで形成される化合物であるジケトンアミン(diketoenamine)と呼ばれるポリマーを開発することに成功した。使用済みのジケトンアミンは従来のように熱で溶かすのではなく、強酸で溶かすことによって添加物などと分離させることで、“純度”の高いポリマーのみを回収することが簡単に可能になるのだ。

 リサイクルの手間やコストを考えると、割りに合わないとしてリサイクルを放棄している国や自治体もあるのだが、このように低コストかつ簡単にリサイクルができるプラスチックが普及していけば、環境問題に少なからぬ好影響を及ぼすことになるだろう。

■効果的なリサイクル推奨メッセージとは?

 リサイクルが簡単で劣化しないプラスチックが早く世に出回って欲しいものだが、それまでは地道にゴミを分別し、その一部のリサイクルを心がけるしかない。ではどうすれば人々のリサイクルへの意識が高まるのだろうか。ちなみに2015年の調査によれば世界的にはリサイクル可能な製品の13%しか実際にリサイクルされていないというということだ。

 米・ペンシルベニア州立大学、ボストン大学などの合同研究チームが2019年5月に「Journal of Marketing」で発表した研究では、消費者に与えるメッセージの表現方法がリサイクルの動機に大きな影響を及ぼしていることが報告されている。我々は「リサイクルをしましょう」と一方的に言われるよりも、「リサイクルによって○○が作られます」と具体的にリサイクル後の姿を知らされたほうがリサイクルに積極的になれるというのである。

 研究チームが最初に行なった実験では、単なるリサイクル推奨メッセージと、リサイクル後の製品が示された推奨メッセージの効果の違いを探った。単なるリサイクル推奨メッセージではリサイクル行為が50.9%にとどまるのに対して、同じ製品に生まれ変わると明記された推奨メッセージでは80.5%、別の製品に再生されると記された推奨メッセージでは79.1%にもリサイクル行為が高まっていることが明らかになった。

 続く複数の実験でも、単なる推奨メッセージよりも具体的にリサイクル後の姿を示した推奨メッセージのほうがリサイクル行為率が高まることが確かめられた。またフットボールの試合が行なわれているスタジアムでの実験では、飲料のカップやストローなどが「リサイクルによって作られた」と表記されているもののほうが、使用後にリサイクルされている(58.1%)ことが突き止められた。一方で従来通りのリサイクルマークだけの表示であるとリサイクル行為は19%にとどまっている。

 こうした実験結果によって、これまでのリサイクル推奨メッセージの表現方法に見直しが求められることは間違いなのだろう。公共広告などの表現はあまり波風を立てないようにという観点からか、イメージ優先の表現方法になりがちなのだが、消費者としては具体的に明示されていたほうが行動に及びやすいということにもなる。

 プラスチック汚染の問題など、待ったなしの対策が求められている環境問題だけに、メッセージはもっと直截的に伝えるべき時代を迎えているかもしれない。

■リサイクルにまつわるよくある5つの誤解

 その表現方法は一考が必要ではありそうだが、それでも人々のリサイクルへの意識はわずかずつではあれ高まりを見せている。ゴミの分別とリサイクルへの関心が高まるのはよいことだが、そこにはいくつもの誤解だあるという。米・ペンシルベニア州フィラデルフィアのストリーツ・デパートメント(Streets Department)のディレクターであるカイル・ルイス氏がリサイクルにまつわるよくある5つの誤解を解説している。

●リサイクルできるものは多くない
 リサイクルできそうなものはできる限りリサイクルしようとするのは殊勝な心がけなのだが、実はリサイクルできるものは考えているほどには多くない。

 もちろん市販されている製品のプラスチック容器に関してはほとんどのものがリサイクル可能なのだが、その一方でテイクアウト食品の容器や包装、使い捨てのカップなどの多くはリサイクルできない。また新聞紙や雑誌、段ボールなどはそのままの状態であることが前提で、たとえば脂が染み込んだ宅配ピザの段ボールケースなどはリサイクルできない。古びたビニールホースや金属製コード、ワイヤー類などもリサイクルには適していない。確実にリサイクルできるものをリサイクルしやすい状態で供出することが重要だ。

●ビニール袋、レジ袋はリサイクルしにくい
 レジ袋(プラスチックバック)による海洋汚染が深刻化する中、スーパーなどの現場でもレジ袋を有料にするなどの措置がとられはじめているのはご存知の通りだが、これを“誤解”してレジ袋やビニール袋をリサイクル処理に回すのは現状の処理技術では幾多の困難を伴う。袋類は軽すぎてゴミの分別機器でとらえ難いうえに、機器の稼動部に巻き込まれてしまいトラブルの原因になるということだ。

 同じ理由で、ビンやカンを指定されたもの以外のビニール袋に入れたままリサイクルゴミ箱に出すことも慎まなければならない。

●リサイクルに出す容器は洗うこと
 リサイクルに出すものはサッとでもよいので水で洗わなければならない。飲料のペットボトルやカンは飲み干せば大丈夫だと考える人も多いだろうが、糖分の多いドリンクなどはその後に容器に残留物が張り付いてしまう。

 例えばかなりの量を残した賞味期限切れのジャムのビンをそのままリサイクルに出してしまえば、処理の過程でせっかく洗ったほかのゴミも汚してしまうのだ。

 しかしながら食器のようにきれいに洗う必要はなく、内容物をすべて取り除いた後は水でサッと流す程度でじゅうぶんである。洗剤を使ったりお湯を使ったりすれば、環境汚染のリスクやエネルギーの浪費に繋がり“エコ”の観点からは本末転倒になってしまう。

●間違った再利用
 プラスチックの容器を例えば小物入れにしたり、家庭菜園のプランターに使ったりするなどして再利用するのは良い考えである。しかし個別のプラスチックの容器の特性をよく理解して使用しなければならない。

 例えばドリンクのプラスチック容器の中には、芝刈り機などに使うガソリンの保存容器として使うと変質して危険なケースもある。ちなみにガソリンなどの液体を小分けで保存しておく場合はガラスビンを使ったほうがよい。

●ゴミを減らすことを忘れている
 リサイクルを意識することも重要だが、それと同じくらい意識したいのがゴミの量を減らすことだ。買い物ではエコバッグを持参することをはじめ、カフェでドリンクをテイクアウトする場合はマイボトルに入れてもらったりしてもよい。またマイボトルを常に携行していれば外でドリンクを購入する頻度も減る。

 リサイクルを推進することも重要だが、必要以上に消費しない心がけも“エコ”の観点からは必要とされてくるのだろう。

参考:「Nature」、「AMA」、「Philly.com」ほか

文=仲田しんじ

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