ポップコーンを箸で食べると美味しくなる!?

ライフハック

 コンビニでポップコーンを買っても割り箸はついてこないが、そうであるからこそポップコーンを箸で食べると美味しいのだと最近の研究が示唆している。いったいどういことなのか。

■ポップコーンを箸で食べると美味しくなる!?

 どんなに大好物のメニューでも、毎日のように食べていれば飽きはくる。少なくとも美味しさに感動することは減ってくるだろう。

 シカゴ大学とオハイオ州立大学の合同研究チームが2018年6月発表した研究では、そういう場合は大好物メニューをこれまでとはまったく異なる常識外れの方法や状況で食べてみることをオススメしている。

 68人が参加した実験では、「ゆっくり食べる方法の研究」であるという名目(バイアスを取り除くための口上)のもとで、キャラメルポップコーンを10粒、なるべくゆっくり食べてもらった。その際半数の参加者は指でつまんで食べ、もう半数は箸を使って食べたのだ。

 その後、この食体験をあらゆる角度から評価してもらったのだが、箸を使って食べた参加者のほうがこの食体験により没頭し、より美味しさを感じていることが浮き彫りになったのだ。

 箸を使うのはあまり効率の良い食べ方ではないものの、通ではない1回限りの体験が味わえることで、箸で食べることが食体験の楽しみを向上させたのだと研究チームは説明する。ちなみに2回目も箸で食べた場合はその効果は早くも打ち消され、指でつまんで食べた者と何ら変わらない食体験になるということだ。

 このほかにも水を飲む行為や動画を視聴する行為における実験も行なっており、いずれも普通ではないユニークな方法で行なってみることで、それぞれの体験が新鮮で価値の高いものになっていることが示された。

 面白半分で企画されるフードイベントに「闇鍋」があるが、確かに普段と違う状況下でスリリングに楽しめれば新鮮な気分で食べられて味も美味しくなるのかもしれない。

■日本人に肥満が少ないのは箸のせい?

 日本人であればポップコーンを箸で食べることにそれほど違和感を覚えない人が多いかもしれない。手の汚れを避ける意味でポテトチップスを割り箸で食べる向きも少なくない。日本人の食事には切っても切れない箸文化だが、先進各国から見て日本人の体型がスリムなのも、箸に秘密があるのではないかと考えている人々がいるようだ。

 箸の特徴は、スプーンやフォークに比べてたいていの場合で口に運ぶことができる食物の量が少なくなることが挙げられるだろう。そこでかつて2008年に発表された米・コーネル大学の研究が注目されている。

 アメリカの“食いしん坊”の一部は、バイキング形式で食べ放題の中華レストランを思う存分に堪能しているのだが、研究チームはそうした中華料理店11店で計213人の食事客の食事の模様を詳しく観察した。食事の内容や量はもちろん、客の年齢、性別、身長体重なども詳細に観察している。そして食事の際に箸を使っているのか、フォークやスプーンを使っているのかにも注目したのだ。

 観察して収集したデータを分析した結果、BMI値が高い肥満体型の客ほどフォークとスプーンを使っていて、箸を使う確率が顕著に低いことが判明した。

 さらにBMI値が高い客は盛り付ける際に大きな皿を選ぶ確率が高く、また座る席はバイキング料理がよく見える位置を選ぶことも明らかになった。まさに“食いしん坊”である。

 箸を使うことで食事の量が少なくなる傾向が突き止められ、日本人をはじめとする箸文化圏の人々のほうが肥満になり難いことが示唆されることになった。そして箸を使うことで食事がゆっくりと時間がかかることもまた少量の食事で満足感を得ることに繋がっているということだ。

 日本でも食の欧米化が進んでいるが、体重が気になる向きは意識的に箸を使ったほうが良さそうだ。

■箸を使うことの4つのメリット

 オーガニック系フードメディア「Healthy&organic food」の記事では欧米人ももっと箸を使うべきである4つの理由を解説している。

1.減量を助ける
 前出のトピックに繋がるが、箸を使うことで食事がスローになり、1回に口に運ぶ量が少なくなる。そして結果的に全体の食事量も減るのである。

 食べ過ぎてしまうメカニズムは我々が満腹を感じるのに、胃袋と脳の間でタイムラグがあることだ。胃袋が満腹なっても脳はすぐにはそれに気づけないのである。時間がないからといって急いで食べると、胃袋は満腹になっても脳はまだ“満腹信号”を出さないためにしばらくの間食べ続けられてしまうのだ。

 その点、箸で食べることで食事のペースが遅くなり口に運ぶ量も減るので、“満腹信号”のタイムラグを抑えることができる。

2.グリセミック指数が下げられる
 食品の血糖値の上昇度を示す数値であるグリセミック指数、いわゆるGI値だが、同じものを食べても箸を使って食べることでこのGI値が下げられることが2014年のシンガポールの研究で報告されている。

 例えば米飯をスプーンで食べた場合のGI値は81であるのに対し、箸で食べた場合は68に下がるということだ。これは箸を使うことで1回に口に運ばれる飯の量が少なくなり、さらに食事がスローになりよく噛むことによってGI値が低くなるということである。

3.コーディネーションスキルの向上
 スポーツの分野で注目されている神経系の運動能力を高めるコーディネーショントレーニング(Coordination Training)だが、箸を使うことはこれに準じた効果をもたらすという。箸で正確に食べ物を摘み上げて口に運ぶことは一種のコーディネーショントレーニングになるのだ。また箸を使うことは特に幼児期の知育の発達に好影響を及ぼすということである。

4.喉を詰まらせるリスクの低下
 手づかみでハンバーガーにかぶりついたり、皿を持ってチャーハンをレンゲでかき込んだりするいわゆる“ビッグバイト”は喉を詰まらせるなどの思わぬ事故にも繋がりかねない。箸を使った食事では“ビッグバイト”は起こり難いので、事故のリスクは大幅に低くなる。

 またエコの観点からも使い捨ての割り箸は使い捨てのプラスチックのフォークやスプーンに比べて地球に優しいことは明らかだ。確かに欧米でももっと箸が普及してもよいのかもしれない。

参考:「SAGE Journals」、「Cornell Chronicle」、「Healthy&organic food」ほか

文=仲田しんじ

コメント

  1. 國井実 より:

    なるほど、それでトコロテンはワリバシ一本で食べるのか。

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