フェイクニュースを信じやすい人とは? デマ情報に対処するための3つの助言

サイコロジー

“直感的な判断”は正しい可能性が高いことがこれまでの各種の研究で報告されている。しかし今日のSNS全盛のネット社会ではあまり楽観的に“直感”に頼れそうもないようだ。最近の研究では、直感に依存する傾向の高い人は“フェイクニュース”を信じやすいというのだ。

■フェイクニュースを信じやすい人とは?

“フェイクニュース”に対する人々の意識も高まり、GoogleやFacebok社などは技術的にフェイクニュースを発見・排除する手段を講じている。フェイクニュースを信じてしまう認知的メカニズムについての研究も進んでいて、最新の研究によれば“直感”に頼っている人ほどフェイクニュースを信じやすいということだ。

 米・オハイオ州立大学とミシガン大学の合同研究チームが2017年9月にオンライン学術ジャーナル「PLOS ONE」で発表した研究では、500人から1000人が参加した大規模な3つの調査結果を分析することで、ほとんど(あるいはまったく)根拠や証拠の裏づけがない考えを人々がどのようなメカニズムで信じるに到るのかを探っている。

「真偽が確かめられない判断では直感を信じる」

「本物そうに見えることよりも、証拠がより重要だ」

「真実は権力が決める」

 こうした質問を含む12の質問に参加者は回答し、収集されたデータが分析された。

 どの商品を買うかという判断などと比較すると、いわゆる政治的な“正義”はよく考えると判断が難しいケースもあるだろう。ある人は“正義”はその時の権力にあると考え、またある人は“正義”は時の権力に関係なく検証されなければならないと考える。調査で使われた質問はこうした“政治的態度”を明らかにするものでもあったのだ。

 分析の結果、“真実”は権力と政治が決めていると考えている人ほど“フェイクニュース”信じやすく、一方で物事の判断に根拠と証拠が必要だと考える人は“フェイクニュース”を信じない傾向が高いことが判明した。また関連する別の調査においては、判断の際に“直感”に頼る人ほど、いわゆる“陰謀論”を信じやすいこともわかった。

「“直感的判断”はある状況下では有効なものですが、最初から確証を得ようとしない態度は誤情報からの影響を受けやすくします」と研究チームは言及している。つまり“直感”を信頼するかどうかにかかわらず、手に入る範囲内で裏づけや根拠を探す労力を怠ってはならないということになる。

 研究ではメジャーな“陰謀説”についての支持率も調査しており、45%以上が「ケネディ暗殺のオズワルド単独犯行説」を信じておらず、一方で33%が「キング牧師暗殺の背後に米政府がいる」と信じており、32%が「ダイアナ妃の死亡事故は英王室によって画策された」と信じているという興味深い統計結果も報告している。

 いずれの説もなかなか根強い人気(!?)を保っているが、最終的に“直感”を信じるにしても手に入る範囲内で“裏取り”をするクセをつけることが今後ますます求められていると言えるだろう。

■心理学者「陰謀論は敗者のための理論」

 もちろん本当に陰謀である可能性もゼロではないが、メジャーな“陰謀説”あるいは“陰謀論”はかなりの数が信じている実態もまた明らかになったといえる。選挙、特に米大統領選の前後にはさまざま政治的な陰謀論が浮上してくる。

 米・ウィスコンシン大学、セント・ローレンス大学、マイアミ大学の研究者による合同チームが2017年7月に「Political Research Quarterly」で発表した研究では“陰謀論的思考”と“結論ありきの党派的思考(motivated partisan reasoning)”の両方が、選挙関連の陰謀論を信じることに強い影響を与えていることを指摘している。

 2012年のアメリカ大統領選挙は、民主党現職のオバマ大統領陣営が共和党のロムニー陣営を大差で破って勝利しているが、この時の選挙の前にオバマ大統領の出生地疑惑という“陰謀論”が浮上してきたこともあり、「不正選挙」が強く意識された選挙であった。そしてこの時の大統領選の前後に、研究チームは有権者1230人にアンケートを行なっていたのである。

 アンケート回答を分析したところ、選挙前には62%の人がもし支持候補が敗退した場合は不正選挙が行なわれた可能性が高いと考えていた。しかしいざ選挙が終わってみるると、不正選挙が行なわれたと考えている人は39%に下がった。容易に想像できるが、この39%の大多数は負けた候補を支持していた人々だ。つまりオバマが勝利した後、民主党支持者の中の“不正選挙信者”は激減し、共和党支持者の中の“不正選挙信者”が増えたのだ。ということは陰謀論は敗者の思考であるとも言える。

 何か1つの陰謀理論を信じた人々はその後、事件や状況を陰謀の産物と見なす傾向が形成されるという。こうしてほぼすべての陰謀論を信じている一部の人々と、陰謀論を一切信じない一部の人々に分かれてくるということだ。そしてこの現象は、個々の陰謀説の真偽を問う態度とは関係なく、決して少なくない一部の人々ははじめから偏見を持って物事を見ていることの証左にもなる。

 誰にでも考え方のクセや、独自の思考方法といったものがあるとは思うが、凝り固まってしまえば新たな発想を生み出したり柔軟な思考が難しくなる。物事の見方に偏向がないのかどうか、時折意識してみてもよいのだろう。

■デマやフェイクニュースに対処するための3つの助言

 真贋を見抜く目を個人レベルで持つことが要求される時代あって、何を指標にすればよいのか? こうした社会の要望に応えるべく、米・ワシントン大学では「Calling Bulls**t(嘘つきを連れ出せ)」という授業が開講された。

 講義の目的は「社会科学、自然科学のどちらにおいてもエビデンスを構成するデータとモデル理論をどうすれば批判的に考えられるのか」ということについて理解を深める内容であるということだ。

 カール・バーグストローム教授とジェビン・ウェスト助教授によって行なわれた講義は、フェイクニュースなどの社会的時事問題に触れるほかにも、虚偽の主張をいかにして論破するかの例を見せて共に考えていくことに主眼が置かれたものであるという。

 講義に関するパネルディスカッションの中でウェスト助教授はデマ情報やフェイクニュースに対処するための3つの助言を挙げている。

1.もっと考えよ、あまり群れるな
「私は学生にもっと考えさせたいし、あまり群れてほしくないと訴えています。情報のすべてに目を通す時間がないというのに、多くは他の人々と行動や意見を共にしすぎています」(ジェビン・ウェスト助教授)

2.別の角度から眺める
「私たちは、フェイクニュースに多額のお金が関わっていることを知っています」とウェスト氏は語る。そして一部の大企業はブランドイメージが損なわれるためにフェイクニュースメディアには関わりたくないと考えているということだ。つまり一部の大企業のフェイクニュースへの嫌悪感によって金が動く可能性もあることになる。こうしたことがフェイクニュースにまつわる認識において別の視点を得る手助けになる。

3.シンプルな3つの確認
 どの分野であれ有効な3つの確認事項があるという。それは、誰がその情報を私に告げているのか? どうやって彼らはその情報を知ったのか? その情報の何が彼らのためになるのか? ということだ。この3点を明らかにしてみることで、真偽の見極めがしやすくなるということだ。

 情報の洪水によって真実が見えにくくなっている中にあって、何が本当であるのか、その判断が個人に委ねられた時代に突入したとも言える。確かな情報に触れ、確かな目を持つことがもはや死活問題になったと言えるのかもしれない。

参考:「PLOS ONE」、「Academia」、「Geek Wire」ほか

文=仲田しんじ

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