ダイエットを台無しにする危険な“見えない砂糖”を排除せよ!

サイエンス

“白い粉”といえば何やら響きの悪い物言いになるが、日常生活の中でどこにでも普通にある白い粉もまた依存症を引き起こすことが指摘されている。その白い粉とは砂糖だ。

■現代の食環境における“砂糖依存症”が深刻な問題に

 違法な薬物は論外にして、身近なところで深刻な健康被害を及ぼす依存性の高いものといえば、まずはアルコールやタバコ、カフェインなどがあげられるだろう。人によっては睡眠薬など合法の薬剤への依存症状を持つ人もいる。この身近な依存症に“砂糖依存症”を加えるべきであると主張している科学者も多い。それほど、現代社会では砂糖依存症が深刻な問題となっているのだ。

 砂糖依存症はマウスを使った実験でも証明されており、また人間の脳波を測定した実験でも、砂糖が脳の報酬系に作用していることがわかっている。甘さで口を楽しませるのみならず、脳にも作用しているということは、砂糖への欲求が繰り返し生じるということでもある。つまり依存症を発症するということだ。

 そしてさらに厄介なことに砂糖の受容体はマヒしやすく、だんだんと満足感を得られるハードルが上がるためより多くの砂糖を欲するようになるという。まさに薬物依存と同じ症状なのである。もちろん健康への被害も深刻だ。容易に想像できることだが、砂糖の摂り過ぎは肥満に直結する。さらに2型糖尿病、がん、心臓病のリスクを高める。

 オーストラリア・クイーンズランド工科大学の研究によれば、長期にわたる砂糖の摂取はコカイン中毒と同じ症状に発展すると結論づけており、薬物中毒患者と同じように治療すべき症状であると主張している。今後この砂糖依存症も病気に指定されるべきであるということだ。

 決して少なくない科学者たちによって砂糖の危険性が叫ばれはじめているか、問題を複雑にしているのは“見えない砂糖”の問題だ。

 2016年初旬にコーヒーチェーン大手のスターバックスで提供されているドリンクメニューのひとつに、100g(小さじ約25杯)もの砂糖が入っていたことがニュースとなり話題を呼んだが、外食や惣菜、加工食品などで知らず知らずのうちに摂取しているこの“見えない砂糖”が問題になっているのだ。

 世界保健機関(WHO)が公表している砂糖の適正量は1日にティースプーン6杯分(25g)だが、外食でもし前出のようなドリンクを飲んだ場合、それだけでいとも簡単に適正量を超えてしまうことになる。今後は外食産業においても、成分の表示義務が厳格化される流れにあるというが、もちろん消費者の側もドリンクや料理に含まれている砂糖の量に意識的になることが求められるだろう。

■第6の味覚“スターチー”とは?

 砂糖の過剰摂取の危険性が叫ばれているが、同じく最近何かと悪者扱いにされているのが炭水化物だ。炊きたてのご飯、焼きたてのパンは好きな人ならそれだけで美味しく食べられるものだが、それもそのはず、人間の舌は炭水化物ならではの味を知覚していることが最近の研究で明らかになったのだ。

 甘味、塩味、酸味、苦味の4つの味覚が長らく基本であるとされてきたが、ご存知の通り日本食の国際的評価の高まりとともに第5の味覚である「うまみ」が新たに認められるようになった。そして今回、6番目の味覚である“スターチー”の存在が指摘されているのだ。スターチーとは、ご飯やパン、パスタなど炭水化物の美味しさを感知する味覚のことだ。

 これまで、炭水化物の美味しさは唾液で分解された後の糖分の“甘味”であるというのが主流の見解であったという。そこで、オレゴン州立大学のジュユン・リム氏らの研究チームは、舌の甘味を感じる部分をブロックする特殊な化合物を用いて炭水化物を味わう実験を行なった。そして炭水化物の食物に特有の、甘味とは別の6番目の味覚を発見したのである。

「なぜ人々が炭水化物を好むのか、それはスターチーにあることを確信しています。…(中略)…もし(食べ放題の食事で)チョコレートとパンを一緒に出されたら、きっとチョコレートのほうは少し食べて、パンを主食としてたくさん食べますよね」(ジュユン・リム氏)

 あらゆる食文化で炭水化物が主食になっているのは、この第6の味覚であるスターチーがあるからであり、その特色としてたくさん食べることを可能にする味覚であるということだ。コメ好きな日本人には多くがうなずける発見ということかもしれない。

 実は味覚に関してはわかっていないことが多く、我々の舌はまだまだ多くの味覚を感知していることも指摘されている。非公認ながら2015年には肉の脂身などの美味しさを知覚する“脂味”が示唆されており、またカルシウム、血液、アミノ酸などにもおそらく独立した味覚があるのではないかといわれている。確かに世にある個々の料理には一言では表現できない味のバリエーションがあることは間違いない。それらが5、6種類の味覚の組み合わせてすべて説明できるのかどうか、疑問があってもおかしくないだろう。

 まずは日頃の食生活で砂糖と炭水化物をどれくらい摂取しているのかを把握し、調味料なども含めて食品の糖質に意識的になることが求められているのだろう。

参考:「Independent」、「Science Alert」ほか

文=仲田しんじ

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