サウナー歓喜! サウナ入浴の健康効果を指摘する科学研究が相次ぐ

サイエンス

“サウナー”という言葉も作られるほどサウナの根強い人気が続いているが、サイエンスの世界からもサウナ好きには嬉しいニュースが続いているようだ。

■サウナ習慣が血圧を下げる

“ガマン比べ”をして倒れる有名人が時折ニュースを騒がせたりもするが、体調を把握して適切に入っている限りにおいてはサウナは健康に資するものであることが各種の研究で報告されている。そして最近の研究ではサウナが血圧に好影響を与えることが指摘されている。

 フィンランドの心臓病研究機関であるKuopio ischemic heart disease risk factor study(KIHD)が2017年11月に「American Journal of Hypertension」で発表した研究は、1621人の中年男性の血圧の変化をサウナ入浴習慣の観点から平均22年間に及ぶ追跡調査によって分析している。

 サウナの本場と言われるフィンランドだけに、サウナ入浴は広く浸透していて、入浴の頻度によって週1回、週2~3回、週4~7回という3つのグループに分けられた。調査の最初の段階で高血圧患者はいなかった。

 平均22年間の追跡調査から得られたデータを分析したところ、残念ながらその後15.5%が高血圧症と診断された。しかしサウナ入浴頻度と高血圧症の発症に関係があることが認められたのだ。

 最も高血圧症になる確率が高かったのは週1のグループでこれを基準にすると、週2~3回のグループは発症リスクが24%低くなり、週4~7回のグループは47%もリスクが低減していることが判明したのだ。

 サウナ入浴によって平均2度体温が上昇することで血管が拡張し、その分だけ全身の血圧が一時的に低下する。そして頻繁なサウナ入浴によって血管の機能などの内皮機能(endothelial function)が徐々に向上していくということだ。ということはやはりサウナの効能は頻繁な入浴によって確実になっていくということだろう。

 そして同種の研究ではサウナ入浴の習慣によって肺疾患の発症リスクも下げていることが指摘されている。決して“ガマン比べ”はしないようにしたいが、“サウナ健康法”がサイエンスの側からも支持されているようだ。

■サウナは脳にもよい

 習慣化したサウナ入浴は身体機能に好影響を与えるばかりでなく脳にも良いことが昨年の研究で報告されている。サウナは認知症の予防効果もあるというのである。

 前出のフィンランド・KIHDは昨年、2315人の健康な中年男性(42歳~60歳)の健康データ約20年分を分析して、サウナ入浴と認知症の関連を探った研究を発表している。

 今年の研究と同じく入浴の頻度によって週1回、週2~3回、週4~7回という3つのグループに分けて認知症リスクを分析したところ、やはりサウナ入浴の頻度と認知症発症に関係がることが示唆されることになった。週1回のグループを基準にすると、週4~7回のグループでは認知症の発症リスクが66%低くなり、アルツハイマー型認知症の発症リスクが65%低減していることが導き出されたのだ。

 サウナが脳に良いというメカニズムは実はあまりかわっていないようである。研究チームのヤリ・ラウッカネン教授によれば、頻繁なサウナ入浴は心臓に良いのとおそらく同じメカニズムで脳の記憶の機能に影響を及ぼしているということだ。またサウナ入浴で得られるメンタル面でのリラックス効果も脳に良いということである。

 これまでの研究で、激しい発汗を伴う運動(MVPA)は脳のニューロン形成を促進し、灰白質を増加させることが指摘されている。これに似たことが、サウナ入浴でも起きているとも考えられえるという。

 また激しい発汗運動は脳内の血行を向上させ、アルツハイマー型認知症の原因のひとつと考えられている脳内のタウ蛋白(Tau protein)を減少させることから、やはり同じような効果がサウナ入浴でも得られているのではないかという指摘もあるようだ。つまり筋肉は動かさないものの、サウナ入浴は運動と似ていることになる。サウナ併設のジムなどで運動とサウナを組み合わせれば、心臓と脳の健康への効果は倍増することになりそうだ。

■赤外線サウナは安全なのか

 サウナは“蒸し風呂”とも呼ばれるように暖炉のような石焼きストーブによって高温を発生させ部屋の空気を温めているが、小型の施設などでは遠赤外線サウナが使われている場合もある。

 遠赤外線サウナではあまり室温は高くなく、赤外線の波長によって人体が直接温められるので、人によってはなんだか電子レンジの中に入っているようで不安に感じる向きもあるかもしれない。正確には電子レンジで発生しているのはマイクロ波で赤外線ではないのだが、はたして赤外線を浴び続けても人体に危険はないのだろうか。

 これについては2004年に熊本大学で研究が行なわれている。実験では14人の心臓疾患の危険因子を持つ参加者に1日に1度、15分の遠赤外線サウナ入浴とその後の30分の昼寝をしてもらいこれを2週間続けてもらった。いわば“サウナ療法”ということになる。

 結果は明瞭にあらわれ、2週間後には血圧は下がり泌尿器系のストレスマーカーが減少していた。つまり遠赤外線サウナを活用した“サウナ療法”は確実に効力を発揮していたことになる。具体的には身体の酸化を防止し、アテローム性動脈硬化の発症を予防するということだ。また同研究チームが翌年の2005年に発表した後続研究では、遠赤外線の低温サウナ(60度)が慢性的な不整脈の改善に効果があることが報告されている。

 そしてこれまでのところ、適正時間の赤外線サウナを浴びたことで健康を悪化させた事例は報告されていないということだ。赤外線サウナに不安を感じる必要はまずないと言ってよさそうだ。また赤外線が男性の生殖器にあたることで、精液がダメージを受けるのではないかと懸念する声も一部から上がっているが、それを裏付けるデータは今のところはないということである。

 サウナの健康への影響についてはまだまだ研究が必要とされているが、確認しておきたいのはサウナによるダイエット効果はまったくないという点だ。大量に発汗するサウナ入浴は運動に似ている行為だが、カロリー消費という点では運動とはまったく異なる行為である。

 それでも赤外線サウナによってコレステロール値の改善や、関節痛の緩和などの効果も期待できることで、普通のサウナと共に積極的に遠赤外線サウナも活用したいものだ。

参考:「Oxford University Press」、「National Library of Medicine」、「National Library of Medicine」ほか

文=仲田しんじ

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