シャイな人はお酒で気が大きくなるといわれているが、翌朝の後悔もまた人一倍深くなることが最近の研究で報告されている。
■シャイな人の高い飲酒リスク
ハングオーバー(二日酔い)とアングザエティ(不安)を掛け合わせた言葉にハングザエティ(hangxiety)という新語があるのだが、シャイな性格の飲酒者は翌朝にこの“ハングザエティ”で大きなダメージを負っているようだ。シャイな人々は“酒の上の席”でしてしまったことをより深く後悔しているのである。
英・エクセター大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの合同研究チームが2018年11月に「Personality and Individual Differences」で発表した研究では、外でお酒を飲むことも多い100人の社交的な飲酒者に対する調査を通じてアルコールが気分に及ぼす影響を探っている。
収集した各種のデータを分析した結果、シャイな性格の人物は6杯のアルコール飲料で不安感が緩和されてくることが突き止められた。シャイで気弱な人には“酒の力”がより得られることになる。
しかし“酒の力”が効くぶんだけその代償もある。シャイな人物は翌朝、二日酔いの頭と共に昨夜の酒の席での言動により深い後悔の念にとらわれるという。まさい“ハングザエティ”に襲われるのだ。
WHO(世界保健機関)が飲酒習慣を評価するために飲酒習慣スクリーニングテスト(AUDIT)を作成しているのだが、シャイな人物はこのAUDITで高い(悪い)スコアになりがちであることも研究によって明らかになった。つまりシャイな人物はアルコール依存に陥りやすいということになる。
研究チームはシャイな人はシャイのままでいいのだと提言している。自分がシャイで内向的な性格であると認めることで、アルコールの大量消費から抜け出す道が探れるようになるということだ。
先進各国のアルコール飲料の消費量は減っているが、それでもまだまだ社会におけるアルコール依存の問題は根深い。“酒の力”を借りるという動機でアルコールを口にするのは厳に慎まなければならないだろう。
■二日酔いが脳に与える悪影響
深い後悔と自責の念に打ちひしがれるのが二日酔いだが、脳に対してもきわめて悪い影響を与えていることが最近の研究で指摘されている。これまで考えられていた以上のその悪影響は長く続くという。
英・バース大学の研究者をはじめとする合同研究チームが2018年8月に「Addiction」で発表した研究では、これまでの研究論文をメタ分析することによって、二日酔いが脳に及ぼす影響を探っている。
メタ分析の対象になったいずれの研究でも二日酔いの状態では人々の注意力が散漫になり、記憶力と動作の調整能力が損なわれることが示されている。またある実験では二日酔いの状態でドライビングシミュレーションが課されたが、やはり二日酔いでは車の操縦能力が低下していることが報告されている。
多くの人々は酒を飲んだ翌日の運転は問題がないと考えているものの、たとえアルコールが身体から抜けていたとしても前夜の飲酒は翌日の運転を損なうものになると研究チームは説明する。
旅客機パイロットの二日酔いの問題が話題になっているが、これまで考えられてきた以上に二日酔いは我々の認知機能を損なっていることが改めて突きつけられる研究結果となった。
昼休みや残業中の飲酒を禁止している職場がほとんどだとは思うが、これからは二日酔い状態での出勤にもペナルティが課されるようになるかもしれない。ウィークデーの夜の飲酒は嗜む程度にしたいものだ。
■サイエンスに基づく二日酔い対策6選
気をつけてはいても二日酔いになる朝もあるかもしれない。科学ライターのサラ・フェヒト氏がサイエンスに基づく二日酔い対策を6つ解説している。
●飲酒の前にアスパラガスを食べる
2009年の研究で、アスパラガスに含まれるアミノ酸とミネラルが肝臓の細胞を守る働きがあることが報告されている。また食物繊維とビタミンA、ビタミンCが豊富で健康に良い。
●リキュールとバーボンを避ける
ダーク・リキュールとバーボンはコンジナー(congener)と呼ばれるアルコールが発酵する時に生じる副産物を生み出す。メタノールなどのコンジナーは分裂して毒素であるホルムアルデヒド(formaldehyde)やギ酸(formic acid)を発生させて悪酔いと二日酔いの原因となる。
●ビタミンBを多く摂取する
ビタミンBは肝臓のアルコール分解を助け、損傷した神経を修復するので、飲酒の前後にビタミンBを多く摂ると二日酔いの可能性が低くなる。肉、卵、魚、フルーツ類にも多くビタミンBが含まれているのでこうしたものを酒の肴にしてもよい。なるべくならサプリよりも自然の食材からビタミンBを摂ったほうがよいだろう。
●スプライトを飲む
アルコールが分解される過程でエタノールが二日酔いの元凶であるアセトアルデヒドに変わる。アセトアルデヒドはその後に酢酸塩に変わるのだが、2013年の中国の研究で、ソーダ飲料であるスプライトがアセトアルデヒド脱水素酵素の活性を高めてアセトアルデヒドの分解を早めてくれるというから興味深い。
●酸素を取り込む
2010年の韓国の研究で、溶解酸素濃度の高いお酒を飲むことによって、体内でのアルコールの分解が促進されることが報告されている。高濃度酸素水で割ったお酒は二日酔いしにくいということになるかもしれない。
●水を飲む
お酒ばかりを連続して飲まずに間に水を飲むように心がけることでかなり二日酔いが防げる。スポーツドリンクなら電解質も補給できるのでなおのこと効果的だ。
最も手軽なのは水を飲むことだろう。お酒を飲むお店でチェイサーをもらったり、もっぱら水割りやお湯割りのお酒を飲むようにしてもいいかもしれない。
参考:「ScienceDirect」、「Wiley Online Library」、「Popular Science」ほか
文=仲田しんじ
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