日本に限らず一度は戦火にまみれた土地では折にふれて不発弾や地雷などが見つかるが、場合によってはこれら戦争の遺物をそうとは知らずにいろんな用途に活用している危険なケースもあるから驚きだ。
■25年間、愛用のクルミ割り道具だったものの正体は?
きわめて硬いクルミを割るためにさまざまなツールが用意されているが、日常的にクルミを割る機会がある人であれば、きっとそれぞれに使い慣れた愛用の道具があったりするのだろう。しかしながら驚くべきものをクルミ割りの道具に使っていた人物が偶然に見つかった。なんと25年もの間、手榴弾でクルミを割っていた男性の存在が発覚したのである。
中国・陝西省(せんせいしょう)安康市(あんこうし)の村に住む男性は、25年前にたまたま友人から譲り受けた道具を見て、クルミ割りとして使うのにちょうど良いことを発見して以来、その先端が硬く細長い物体をクルミ割りの道具として使ってきたという。
すっかり愛用のツールになっていたのだが、ある日警察官が村民たちにビラを配りにやってきた。渡されたそのビラには手榴弾の写真が載っており、この手榴弾を所有するのは違法であると警告するものであったのだ。
ビラを見た男性はビックリ仰天して、すぐさま自分から警察に自己申告。こうして四半世紀にもわたって使い続けていた愛用のクルミ割り道具はあえなく没収されることになったのである。
地元警察によれば、この手榴弾は爆発前のものであるが中に火薬が残っているのかどうかはよくわからないという。ともあれ、クルミ割りの最中に爆発していたとしてもおかしくない代物であったことは確かである。
ビラを見せられて事実を知った時には思わず寿命が縮む思いだったかもしれないが、しかしながらきっとこの男性にはそんな心配は無用かもしれない。日常的にクルミを食べることできわめて健康になれるからだ。
■クルミが腸内細菌の“多様性”を高めて健康に導く
“第二の脳”とも言われ、最近何かと話題にのぼることが多い腸内環境だが、クルミを毎日少量食べ続けることで腸内の“善玉菌”が増え健康に資することが最近の研究で指摘されている。
米・ルイジアナ州立大学のラウリ・バイアリー准教授ら研究チームが2017年に発表した研究によれば、クルミの継続的な摂取によって腸内細菌の状態が好ましい変化を遂げることが報告されている。
「クルミは“スーパーフード”と呼べる食べ物です。オメガ3脂肪酸とアルファリノレン酸を豊富に含み、加えて食物繊維も申し分なく、さらに高いレベルの抗酸化物質を含んでいます。そして今回、クルミは腸内細菌に好ましい変化を及ぼすことが示唆されることになりました」(ラウリ・バイアリー准教授)
研究チームはマウスを使った実験で、食事にクルミを混ぜたグループのマウスの腸内では細菌の種類と数が増えており、乳酸菌などの好ましいバクテリアが多く存在していることがわかったという。
これまでの研究では腸内細菌の“多様性”は健康のバロメーターと言われており、腸内細菌の種類の少なさが肥満や炎症性腸疾患の原因になっていることが指摘されている。そしてこのクルミは腸内細菌の“多様性”を高めて健康に導いてくれるのだ。
また、クルミを食べることで、循環器系疾患のリスクが低下し、腫瘍の肥大を抑制し、加えて脳の健康にも関係があることが指摘されている。1日1回の分量はクルミ14個分が適量だという。製品版のクルミは半分になっているものが多いのでその場合は28粒ということになる。良好な腸内環境を保つためにクルミの日常的摂取を検討してみてもよいだろう。
■1日70グラムのクルミが精子の運動性能を高める
クルミについては男性にとって見過ごせない話題もある。日常的にクルミを食べることで、精液の質が向上するというのである。そしてもちろん男性側の不妊の改善にも繋がる。
米・デラウェア大学のパトリシア・マーティン・デレオン博士らの研究チームが2017年2月に学術誌「Heliyon」で発表した研究では、1日約70グラム(2.5オンス)のクルミが、精子の運動性能を高めることを指摘している。クルミの脂質の72%を占める多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids)は精子細胞のダメージを修復する働きがあるということだ。具体的には精子細胞にダメージを与える脂質過酸化反応(lipid peroxidation)を抑制するのである。
研究チームはマウスを使った実験で、1日の摂取カロリーの約2割をクルミにして9週間から11週間が経過したオスのマウスは、精子の出来具合と動きを著しく向上させていることを突き止めた。人間にあてはめれば1日約70グラムということになる。
「これは動物実験の結果ですから、直接人間に適応されるというわけではありませんが、これまでの研究でもクルミは精子の機能にとってきわめて重要な鍵を握る食品であることが指摘されています」(パトリシア・マーティン・デレオン博士)
また2012年に類似の研究を行なっているUCLA Fielding School of Public Health and School of Nursingのウェンディ・ロビンス博士は次のように述べている。
「精子のクオリティを改善するメカニズムの探求は、今後さらに価値を持つ重要な研究になります。クルミを取り入れた豊かな食生活で精子のクオリティ向上に関わるメカニズムを確認するには、より長期間にわたる研究と、さらに多様な男性集団のデータが必要です」(ウェンディ・ロビンス博士)
腸内環境にも精子のコンディションにも良いというクルミのスーパーフードぶりにますます注目が集まっているようだ。
参考:「Daily Mail」、「Express」、「Daily Star」ほか
文=仲田しんじ
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