オンラインポルノで失業率を予測!? アダルトコンテンツ研究最前線!

サイエンス

 表立って声高には語られないものの、オンラインコンテンツとして揺るぎないメジャー分野がオンラインポルノである。まさに“隠れファン”が多いオンラインポルノなのだが、ここ最近はちょっと分が悪い話題が持ち上がっているようだ。

■失業率を発表前に予測できる意外な指標とは?

 世論調査やアンケートの回答を求められることもあると思うが、その場合多少は身構えて良識的な意見を述べたり、逆にやや極端な見解を主張したりすることがあったとしても、人情としては驚くべきことではないだろう。したがってこうした調査はやや“脚色”されている部分が無きにしも非ずなのだが、その一方で脚色や虚飾を盛り込むことなくストレートに“欲望”を反映しているのがネットの検索履歴だ。

 元Googleのデータサイエンティストであるセス・スティーブンズ・デビッドウィッツ氏はネット検索履歴というビッグデータを分析、検証してこれまでの社会通念ととはちょっと違った人々の“実像”の数々を暴いている。ビッグデータで判明する我々の“本当の姿”を白日の下に晒したのである。

 アメリカの失業率は毎月発表される米雇用統計で報告され、株価や為替などにも影響することから大きな注目を集めているが、デビッドウィッツ氏によればあるビッグデータを調べることで、発表される前に失業率が予測できるということだ。

 ここまで話せばもうお分かりだとは思うが、その月の失業率にきわめて深い関係にあるのが、ポルノサイトへのアクセス状況なのだ。

 デビッドウィッツ氏は2004年から2011年のアメリカの毎月の失業率データをシステムに入力し、各種のビッグデータとの関係性を探ったのだ。すると、失業率の変動に最も一致するビッグデータがオンラインポルノサイトである「Slutload」のアクセス状況であることを発見したのである。つまりその月の「Slutload」へのアクセス数が多かった場合、失業率が高まるということである。

 失職後の手持無沙汰な時間にオンラインポルノ視聴が増え、その数字が時間差を経て失業率にあらわれることになる。

 この発見はあくまでもビッグデータの一致度から自動的に導き出されたものであり、もちろん失業率の予測にはほかにもっとよい手段があるとデビッドウィッツ氏は述べている。しかしながら、株やFXをやる向きにはなかなか(かなり?)気になる話題かもしれない。

■ポルノで離婚率は2倍以上に?

 オンラインポルノ観賞と失業率に高い関係があるというのはあまり知りたくなかったデータかもしれない。しかしさらに気になるデータもあるようだ。なんとポルノは離婚率にも関係があるという研究が昨年発表されているのだ。

 オクラホマ大学の社会学者、サミュエル・ペリー氏らの研究チームは、アメリカの2006年から2014年の総合的社会調査(General Social Survey)から、成人指定(X-rated)映像作品の視聴に関する質問と回答を探して抜き出した。

 何らかの回答をしたのは5698人で、そのうちの1681人は成人指定映像作品を見ていると回答し、373人は調査期間中に初めて成人指定映像作品を見たと答えている。

 研究チームは回答者の中で結婚しているカップルの回答に注目して、調査期間内(最大8年間)の動向も追った。すると結婚生活をはじめてから成人指定映像作品を見はじめたカップルはその後の2年間で、見ていないカップルよりも離婚率が2倍以上になっていたのだ。ポルノ観賞はカップルの仲を引き裂くということなのだろうか。

 男女別で見ると、ポルノを見ない場合で男性の離婚率は5%なのに対し、ポルノを見はじめると離婚率が10%に上昇している。女性の場合はさらに顕著で、ポルノを見ない場合の離婚率は6%なのに対し、ポルノを見ることで3倍の18%にまで急上昇していたのだ。

 いったん見はじめたものの途中から止めた場合、女性の離婚率は再び6%に下がるものの、男性の場合は10%からあまり下がらないという。そもそも、男性の場合は一度ポルノを見る習慣がつくと途中で止めるケースは少ないということだ。

 年齢層でも差かあり、若いカップルほどポルノを見はじめることで離婚に繋がりやすいということだ。またこれは意外なことではあったのだが、週1度以上教会や宗教的な集まりに参加しているカップルは、ポルノを見はじめても離婚率は高くなることはなかったという。宗教は“ポルノ耐性”があるということなるかもしれず興味深いデータだ。

 もちろん今回の研究は限定されたデータ内の分析結果ではあるのだが、研究チームはポルノが離婚へと繋がる傾向に近づくことができたと確信している。ポルノが失業率ばかりでなく離婚率にも深く関係しているというのも、あまり知りたくなかった話ではないだろうか!?

■ポルノを見た年齢が若いほど男性優位思考に

 前出の研究で男性の場合には一度ポルノ観賞の習慣がつくと大半がその後も継続することが指摘されているが、人生で最初にポルノに接した年齢もまた問題になっているようだ。ポルノに接した時期が若い青少年ほど女性観に偏見を持ちやすいというのである。

 米・ネブラスカ大学のアリッサ・ビッシュマン氏がリーダーを務める研究チームは、330人の男子大学生に初めてポルノを見たのは何歳かという質問と、それが自分で望んだものだったのか、偶然だったのか、あるいは友人などによって半ば強制的に見せられたのかについて回答してもらった。男子大学生のほとんどは白人の異性愛者で、平均年齢は20歳である。

 調査の結果、ポルノを初めて見た年齢の平均は13歳で、最も早いのは5歳、最も遅かったのは26歳であった。

 その後、男子大学生たちはそれぞれの行動特性を判定する46の質問に回答する心理テストを受けて、各人の女性に対する考え方と性的奔放さ(sexually promiscuous)が測定された。

 これらのデータを分析した結果、ポルノを見た年齢が若いほど男性優位な考え方をしている傾向が浮き彫りになった。別に女性を蔑視しているというわけではなく「男に任せておけばうまくいく」という態度である。

 研究チームの一員であるクリッシー・リチャードソン氏は、早くにポルノを見た男性は後の人生でセックスをあまり楽しめなくなるのではないかと指摘している。

「早くにポルノを見た男性は(ポルノビデオの)盛り沢山のパフォーマンスに引け目を感じて現実の女性との関係に不安を感じます。現実の性体験はポルノのようにはいきませんから」(クリスティナ・リチャードソン氏)

 そして逆に興味深いのは、ポルノを見た年齢が遅いほど“プレイポーイ”風の性生活になる傾向があるということである。つまり付き合う相手を頻繁に変えたり、同時に複数のパートナーと性交渉を持つ者が増えるのである。リチャードソン氏によれば、青年期の後半でポルノを見た者は、その新鮮さから現実のセックスにより楽しみを見出すのではないかと説明している。

 もちろん“プレイボーイ”になるのもそれはそれで問題を孕むのだろうが、早いうちにポルノに接してしまい現実のセックスに満足できなくなるのも残念な話だろう。しかし今回の調査は、ポルノに接した総時間や良く見るポルノのジャンル、個々人の社会経済的背景などは一切排除したシンプルな調査であるため、あくまでも大雑把な傾向を提示したものである。ともあれアダルトコンテンツに何かと逆風が吹く研究結果がこのように複数報告されていて興味深い。

参考:「Yahoo! News」、「Science」、「University of Nebraska」ほか

文=仲田しんじ

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