求人の応募条件などで“容姿端麗”は今やNGワードになっているが、概して魅力的な容姿の人物のほうが採用されやすいと考えるのは自然なことだろう。しかしあるケースにおいては容姿端麗が不利になることがあるという。
■容姿端麗な人物はアルバイト応募で不利?
一般的にあまり人気のない仕事でも、現在の生活を支え次の目標を目指すために、さしあたってそうした仕事に意欲的に取り組もうと考える人々も多いだろう。そしてこうした仕事の求人に応募した際の選考プロセスにおいて、容姿端麗な人物は敬遠されがちであることが最近の研究で報告されている。
「一般的に望ましくないと思われている面白味に欠ける仕事における応募者の選考において、魅力的な容姿の人物は“差別”されていることが我々の研究で示されています」と語るのはロンドンビジネススクールのマーガレット・リー氏だ。
研究チームは大学生や現実に各種企業で採用を担当しているマネジャーなど、750人以上の参加者による一連の実験を行っている。ある実験では参加者に顔写真つきの求職者のプロフィールが示され、求職者についての印象を測定するための一連の質問が行なわれた。
その結果すべての実験において、参加者は不人気職種の仕事で魅力的な容姿の人物を雇う可能性が低く、人気職種の仕事で魅力的な容姿の人物を雇う可能性が高いことがわかった。つまり容姿端麗な求職者はマネジメント職、プロジェクトディレクター、IT系などの一般的に人気のある仕事での求人で有利だが、逆に倉庫労働者、ハウスキーパー、顧客サービスなどの一般的にあまり人気のない仕事においては求人で不利になっているのだ。
これまでの研究では、採用プロセスにおいて容姿端麗な人物はいかなる場合においても有利であることが示唆されていただけに、結果は驚くべきものであると言える。
しかしながらこれは何も採用担当者が容姿端麗な人物からネガティブな印象を受けているわけでななく、不人気職種の採用においては魅力的な人物は結局仕事に満足しないだろうという予測が強く働くからであるという。つまり容姿端麗な人物を採用してもすぐに辞めてしまいそうな予感がするので敬遠されているのだ。その意味では容姿端麗な人物を決して“差別”しているわけではなく、その端麗な容姿をしっかり評価していることにもなる。そして我々が考えている以上に採用した後に予期される事態もよく考慮して採用を決定しているのである。
容姿に関係なく人生においては必要に応じて各種のアルバイトなどに従事する期間があったりするだろう。とすれば普通のアルバイト面接では容姿端麗な人物はひょっとすると少し不利なのかもしれない。魅力的な人物の生活の意外な“代償”が明らかになったと言えそうだ。
■“イケメン科学者”は有能に見えない?
容姿は問われない種類の職業であっても、容姿端麗であることでさまざまアドバンテージがあることは、社会人には周知の事実だろう。テレビのワイドショーやニュース解説などに時折登場する“専門家”の中にもまた、容姿で選ばれていそうな人物も一部で確実にいそうである。こうした“イケメン”の専門家たちは、実際に人々の目にどう映っているのか。英・ケンブリッジ大学とエセックス大学の合同研究チームが実在する科学者の業績と容姿についての関係を探っている。
研究チームはアメリカおよびイギリス在位の18~81歳までの約3700人を対象に、主にオンライン上で調査を行なった。参加者たちは実在する科学者(遺伝学者と物理学者)600人の顔写真の中からいくつかを無作為に見せられ、それぞれの知性と魅力を評価してもらった。さらに写真の科学者の研究についてどのくらい興味をひかれるかについて、また、写真の科学者がとれほど重要な研究を行う人物に見えるかについても回答した。
集められた回答を分析したところ、いくつかの興味深い傾向が浮き彫りになってきた。
●魅力的な容姿の科学者の研究はそれなりに興味関心を引く。
●魅力的な容姿の科学者の研究はそれほど重要だと思われない。
●非白人(多くはアジア系)の科学者は質の高い調査をしていると思われている。
●年配の男性科学者の研究はほかよりも重要なものに見える。
先入観やイメージの影響を排除する態度が求められているのがサイエンスだが、皮肉なことに科学者の容姿が他の一般的な職業と同じくらいには人物の評価に影響を及ぼしていることになる。そして必ずしも“イケメン”が高評価を受けているわけではないことも指摘されることになった。
研究の副産物としては、科学者にとって自分たちの研究を一般に伝えるときには外見の影響も重要であることが再確認できたことだ。“イケメン”である必要なないが“説得力”のある外見であったほうが評価が高まるのはある意味で自然なことだろう。
■美女の社会生活の7つの困難
“イケメン”はアルバイト面接で不利になるかもしれず、また“イケメン科学者”は研究内容をそれほど重要視されないかもしれないという、魅力的な容姿の否定的な側面が指摘されることになったのだが、それでは“美女”の場合はどうなのか。いろんな局面で得をしていると思われる美女だが、驚くべきことに美女の社会生活には否定的な要素が7つもあるという。
1.女性の友人が得難い
“恋愛市場”においては当然ながら美女は多くの女性にとっての脅威である。男性にとって容姿はスペックのひとつに過ぎないが、女性にとっての容姿はきわめて大きな意味を持っている。そのため美女は同性の友人を得難い。
2.男性から常に性的対象に見られている
基本的に美女は多くの男性から性的対象として見られている。したがって優しくされることはあってもノーマルに接することができないので男性と友人関係を結ぶことも難しい。美女が良好な関係を築ける人物(肉親は除く)は最悪の場合は恋人だけになる。
3.美女について多くの否定的な誤解がある
「美人は3日で飽きる」や「美人は性格が悪そう」など、美女を否定的に見るフレーズが多い。そして組織の中で美女は上司に贔屓にされているとか、昇進したときは「女の武器を使った」などウワサをたてられたりしてゴシップの常連になる可能性が普通の人より高い。
4.言動が誤解されやすい
女性からは「別の世界の人」と見られ、男性からは性的対象と認識されているため、美女の言動は何かと目立ち誤解される可能性も高い。特に男性と普通に会話を進めることが難しく、仕事の話でも趣味の話でも最終的には口説かれることになる。無下に断れば誤解を生むことにもなりさらに厄介な事態を招く。美女は周囲に誤解を与えないよう、そして妙な誘いに乗らないように常にアンテナを敏感にすることが求められているのだ。
5.危険も引き寄せてしまう
魅力的であるということは多くの人々の視線をひきつけていることであり、その分母が大きければ中に危険な人物がいる可能性もある。最悪の場合はストーカー被害など事件に発展するケースもあり、美女であるほど警戒が必要で気が抜けない。
6.シモネタで誤解される
リラックスした会話の中では性にまつわるシモネタも時には話題になるが、美女の場合はそれを許しているといつの間にか話し相手の男性とのセックスに興味があると誤解されてしまう。したがってなるべく“シモネタ厳禁”にすることになるが、そうするとほとんどの男性との間に意味のある関係性を築けないということにもなる。
7.何かにつけて“美人”であることが先にくる
知的能力やクリエイティビティなど、その人物の内面性を評価する場合においても美女は最初に“美人”であることが先にきてしまう。どんな努力をしても最初に“美人”がきてしまうということは、美女のメンタルを生涯にわたって損なう要因になる。
こうした機会にかくも困難を伴う美女の社会生活を考えてみれば、今日の社会に張りめぐらされたさまざまな“バリア”が見えてくるかもしれない。
参考:「Science Alert」、「Live Science」、「Thought Catalog」ほか
文=仲田しんじ
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