“ゆるい繋がり”の友人知人を手放したくないのはなぜか?

サイコロジー

 年賀状のやりとりしかしていない仲の友人知人がいるという人も少なくないだろうが、SNSなどのコミュニケーションツールの普及で、以前よりも友人知人との“ゆるい繋がり”がキープしやすくなった。決まったパートナーや無二の親友がいれば、あまり得るものがない浅い人間関係は必要なさそうにも思えるのだが、我々が考えている以上に“ゆるい繋がり”が実は重要視されていることが最近の研究で報告されている。

■なぜ人は“ゆるい繋がり”を維持しようとするのか?

 固い絆で結ばれた恋人や一生涯の親友の存在は、充実した人生を送る鍵となる重要な要素だろう。幸いにも最愛のパートナーと無二の親友に恵まれている状況においては、仕事関係ならばいざ知らず、プライベートの交際範囲を広げる必要性は薄いはずだが……。最近の研究でこれまで考えられている以上に人々は“ゆるい繋がり”の友人知人をキープしていることが指摘されている。たとえ恋人や親友がいてもかなりの人は“補欠メンバー”との繋がりを維持しているのだ。

 米ミシガン州・ホープ大学の研究チームは658人の大学生を対象に人的交流の実態を調査している。若い大学生たちの同性・異性を含めた交遊関係を調査したところ、72.9%は少なくとも1人以上(平均6人)の“ゆるい繋がり”の友人がいることが明らかになった。恋人や親友がいる者であっても55.6%が1人以上(平均5人)の“ゆるい繋がり”の友人がいることも判明したのだ。

 人々は恋人や親友との関係を維持するためと同じ種類の努力(定期的にメッセージのやりとりをするなど)を、これら“補欠メンバー”との関係維持のためにも行なっていると研究チームは説明している。

 若い大学生の間では“ゆるい繋がり”の関係を維持することは、ごく普通のことであることが明らかになったのだが、研究チームによれば年齢に関係なくこの傾向は我々の交遊関係に広く見られるものであるということだ。例えば夫に先立たれた未亡人にはたいていの場合、すでに有望な再婚相手がいるケースが少なくないともいわれている。

 しかしながら物事の筋として、例えば恋人がいるのに異性の“ゆるい”友人がいたり、親友がいるのに同性の“ゆるい”友人がいるというのは、ちょっとした“背信行為”のようにも映るだろう。だが驚くべきことに恋人や親友とのメインの関係と、こうした“補欠メンバー”との交流とはまったくの“別腹”であり、両方の関係の間に影響を及ぼすことはないということだ。つまり異性の友人がいたとしても恋人との絆は揺らぐものではないのだ。

 ではなぜ人は“ゆるい繋がり”を維持しようとするのか? そこには進化人類学的な生存戦略である可能性もありそうだ。これらのゆるい友人関係はまさに“補欠”であり、メインの関係が崩れた場合のライフラインを確保する行動だと説明できるのかもしれない。

 研究チームはこれまで軽視されてきたこうした“ゆるい繋がり”の交遊関係が、実は人間関係においてこれまで考えられてきた以上に重要な意味と役割を持っているのではないかと指摘し、今後もさらなる研究を続けていくということだ。

■セフレ関係を長く続けるための8つのポイント

 決してメインの人間関係にならない存在には“セフレ”もあるだろう。日本語の「セフレ」はセックスフレンドの略であり英語圏の人間が聞けばあまりにも露骨な物言いに感じられることもあってか、セフレは英語で「実益のある友人(friends with benefits、FWB)」と婉曲的に表現されている。そしてこのFWBの関係はかなりの程度“市民権”を得ているようで、テレビドラマのラブコメなどでも主人公や登場人物のFWB関係が描かれるケースも少なくない。

 恋愛関係には発展させない割り切った交際であるFWBだが、そうはいっても感情の生き物である人間にはFWB関係を続けていくのはけっこう無理がありそうなことは想像に難くないだろう。そこで“セックスコーチ”のシーン・ジェムソン氏がFWB関係を続けていくためのポイントを解説していて興味深い。

1.正直であれ
 見栄を張ったり恋の駆け引きをしたりすることがないからこそのFWB関係である。自分の弱点や欠点、直面している問題などを隠さないことで無理のない交遊が続けられる。そして関係を続けることに無理を感じた場合は相手に正直に伝え、また逆にその旨を伝えられた場合は真摯に聞くことだ。もちろんそこで関係が終わっても仕方がない。

2.友だち関係であることを常に確認し合う
 カップルでもなければ依存しあう関係でもなく、あくまでも対等で協力し合う友人関係であることを常に確認したい。

3.常にポジティブであれ
 FWB関係では常にポジティブであることが大原則だ。何らかの要因でどうしてもポジティブな気分になれない場合は合うべきではない。

4.確実に避妊する
 FWB関係におけるセックスでは絶対に妊娠リスクを負うことはできない。必ずコンドームを装着するなどして確実に避妊の手段を講じることだ。

5.お泊りしない、後戯をしない
 セフレ関係では基本的にお泊りは御法度だ。そしてセックス後に余韻を楽しみながら触れ合う後戯行為も厳禁である。この2つはどちらも恋人関係に繋がるものになるからだ。

6.嫉妬しない
 相手にほかのセフレがいたり、親友がいる場合でも決して嫉妬してはならない。嫉妬心はFWBの関係性を壊すものになる。

7.頼らない、頼られない
 FWB関係が依存の関係になってはならない。相手に頼ることは厳禁で、また頼られることも断固拒否する。依存ではなく協力関係にあらねばならない。

8.セックスだけの関係にしない
 もちろんセックスが主目的の関係がFWBなのだが、決してセックスのみの関係にするのではなく一般的な友人関係も育むべきである。共通する関心のある分野など、話題を広げていくことを心がけたい。

 親しき仲にも礼儀とルールがあるのがFWB関係ということだろうか。なかなかストイックな関係にも思えてくるのだが、お互いに“実益”を感じているのならば、なるべく長くFWB関係を続けられるための工夫と努力が必要なのだろう。

■FWB関係を続けていくのはきわめて困難

 ある意味では潔く、甘えのないFWB関係はクールで格好良いものに感じられたりもするがその実態はどうなっているのか? FWBカップルを1年間にわたって追跡調査した興味深い研究が報告されている。

 性にまつわる心理学関連の著作を多く手がけている作家のジャスティン・リーミラー氏によれば、FWB関係にある者には自ずから4つのタイプに別れるという。

 1.ずっとFWB関係でいたいタイプ
 2.将来的に恋愛関係になることを望むタイプ
 3.将来的にセックスが主目的ではない友人関係を望むタイプ
 4.一定期間後は関係を終わらせたいタイプ

 そしてリーミラー氏が主導する研究チームは、191人のFWB関係にある人物を1年間追跡調査することで、FWB関係が最終的にどうなっているのかを探る研究を行なった。対象となった人々のメインの人物像としては、30歳の異性愛者の白人女性である。そして調査開始時点で平均ですでに3年間FWB関係が続いている。

 研究チームはこれらの人物に現在のFWB関係がゆくゆくはどうなることを望んでいるのかを最初に尋ね、そして1年後にFWB関係に変化が生じた場合はどのような様相になったのかを報告してもらった。

 1年後のFWB関係が実際にどうなったのかを調べてみると、変化はなくFWB関係のままであるのは26%、恋愛関係に発展したのは15%、必ずしもセックスを伴わない単なる友人関係になったのが28%、そして一切の関係が終わったの31%であった。FWB関係が1年以上続くのは4人に1人しかいないということになる。

 そして当人の希望と実際の変化の関係について分析してみるとこれもまた興味深い数字が明らかになった。単なる友人関係になりたいと望んだ者の60%がその希望を叶えた一方、ずっとFWB関係でいたいと望む者で1年後に希望が叶っていたのは40%に留まった。そして恋愛関係になることを望んだ者で実際にその希望が叶ったのはわずか15%にすぎなかったのだ。

 どのような形であれ、1年後も関係が続いていた者は相手とのコミュケーションが比較的頻繁であった傾向も浮き彫りになったという。ある意味では当然だが、コミュニケーションが疎遠になると関係が終わる可能性が高くなるのだ。そして一定期間で関係を終わらせたいと望む者はコミュニケーションを拒むことでお望み通りの結末を迎えることは言うまでもない。

 ともあれこの調査から言えるのは、FWB関係を続けていくことはきわめて困難を伴うものであり、恋愛関係になることを見込んでFWB関係を結ぶ考えは望み薄であることだ。セフレを持つか持たないかは人それぞれだが、こうした統計的事実を知っておいても損はないだろう。

参考:「Taylor & Francis Online」、「Your Tango」、「Business Insider」ほか

文=仲田しんじ

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