ここ最近、アメリカでも日本でも“ぽっちゃり”系のモデルやタレントが人気を集めていると思うが、女性の外観に関して本当に世の中の好みが変化しているのだろうか。最近の研究では、“ぽっちゃり”人気の裏側にある現象に光が当てられている。
■人気の“ぽっちゃりモデル”のファンは誰?
モデルのアシュリー・グラハムなどをはじめ“ぽっちゃり”系の有名人の活躍が良く目につく昨今だが、実際に好まれる女性のタイプに社会的な変化が起っているのだろうか? そして女性たちはこの現象をどうとらえているのか。女性が女性のボディを見てどう感じ、どう評価し、そして振り返って我が身のボディどう認識しているのかを探る実験が行なわれている。
米・フロリダ州立大学の研究チームが2017年7月に学術誌「Communication Monographs」に発表した研究は、現在平均的な体型でありながらも今よりも痩せたいと望んでいる49人の女子大生を対象に行なわれた実験を報告している。
参加した女子大生は衣料チェーンの広告に登場する数多くの女性モデルの写真を見せられ、それらの人物を「やせ型」、「標準」、「ぽっちゃり」に分類する一連の作業を行なった。ちなみに“ぽっちゃり”とはいっても広告モデルであることから極端な肥満体型の人物はいない。
この分類作業に加えて各モデルの魅力、自分にとっての好ましさ、自分との比較度合についても評価することを求められた。また自分の体型に対する満足度などの質問にも答えてもらった。
彼女たちの回答を分析した結果、やはりモデルのボディサイズによって異なる認識を抱いていることが浮き彫りになった。
やせているモデルを目にした際には、より自分の体型を強く意識しており、その一方でモデルを細かく見ていないため印象が薄く、あまり記憶には残っていないという。ちなみにやせた人物と自分を比較し過ぎることはメンタルに悪影響を及ぼすことがこれまでの研究でも指摘されている。
これに対し、標準体型と“ぽっちゃりモデル”を見た際には人物を細かく見ており、そのぶん記憶にも強く残り、そして自分の体型のことはあまり意識しないで済むことから、現在の体型に対する満足感が高まる傾向にあった。
研究の結果“ぽっちゃりモデル”は、自分の体型を気にしている若い女性の間で特に人気を集めている実態が示唆されることになったのだ。彼女たちは“ぽっちゃり”モデルを見て自分を責めなくていいと感じ癒されているのである。
もちろん今回はかなり限定されたサンプルの中での実験であり、今後同様の実験をより大きな規模で行なう必要があるとしながらも、研究チームは今回の研究結果は現在の“ぽっちゃり”人気を説明できるものであると言及している。
この後も“ぽっちゃり”人気が続くのかどうかは分からないが、体型を気にする若い女性たちが“ホッとひと息”つける状況にあるということなのかもしれない。
■テレビの視聴時間が長いと女性の好みがかわる?
“ぽっちゃり”人気は若い女性たちのメンタルの健康にとって歓迎するべきものであることが指摘されることになったが、女性のボディサイズに対しての好みは実際のところどうなっているのか? 最新の研究ではテレビの視聴時間と好みの女性の体型との関連が指摘されている。
アメリカ人の通俗的イメージとして、映画やテレビを見ながらポップコーンなどをひたすら口にしている姿があったりもするが、それはもちろん古いステレオタイプのイメージであって現在のアメリカ人にはそのまま当てはまるものではないだろう。
しかしニカラグアのある村では、まだこのイメージがおおむね通用しているという。つまりテレビの視聴時間が長い者ほど栄養状態が良い(場合によっては過剰な)のである。
ここに目をつけた(!?)イギリスのダラム大学をはじめとする合同研究チームは、この地の112人の村民に対して興味深い調査を行なっている。
参加した村民たちは普段のテレビ視聴時間を申告すると共に栄養状態を診断され、さらに好みの女性のタイプを明らかにするテストを受けたのだ。
村民たちから収集したデータを分析した結果、テレビの視聴時間が長く栄養状態の良い村民は、そうでない村民よりもやせた女性を好んでいる傾向が浮き彫りになった。
残念ながら(!?)、テレビの視聴時間が長くて栄養状態がそれほどでもない(あるいはその逆)という村民がいないことから、テレビ視聴と栄養のどちらがより女性の好みを左右しているかは判然とはしない。
しかし研究チームが統計学のベイズ流混合モデル(Bayesian mixed models)を使って分析したところ、テレビの視聴時間の長さが、やせた女性を好むことに関係していることが判明した。テレビに登場する女性は平均して現実生活の中の女性よりも痩身であるため、テレビ視聴時間が長いほどやせている女性を見る機会が増えることで、それが女性の好みに影響を及ぼすことは想像に難くない。
テレビに限らずインターネットや各種メディアに接する時間が長くなっている現代人にも、細身の女性を好む傾向はおおむね共通しているものだと思われる。“ぽっちゃり”人気が起っていても大勢の好みは変わっていないようであるがいかがだろうか。
■男性の“巨乳好き”は幻想だった?
同じく“ぽっちゃり”人気がメジャーな現象ではないことを示唆する気になる調査も報告されている。理想的な女性の胸のサイズについてのアンケートだ。メディアでは何かと大きな胸の女性が話題にとりあげられることが多いようにも思えるが、実際の人気はどうなのか。
イギリスのオンライン医療サービス「Dr Ed」が、アメリカ人の男女1000人とヨーロッパ各国の男女1000人に対して、女性の理想的な胸のサイズを聞き出すアンケート調査を行なっている。
多くの男性はきっと大きな胸の女性が好きなのだろうというイメージもあるが意外や、“巨乳好き”の男性は35.3%に留まり、半数以上の53.6%は平均サイズの胸が好きであるという結果が算出された。女性はさらにこの傾向が強く“巨乳好き”は30.5%を占めるに過ぎず、60.4%は平均サイズの胸が最も好ましいと考えているようだ。さらに男性の11%、女性の9.7%は小さい胸のほうが好きであるとその“立場”を明らかにしていることも興味深い。
そして具体的には、男女共にCカップが最も人気が高い(男性48.5%、女性52.5%)。さらに興味深いのは男女共に2位に入っているのはDカップではなくBカップであることだ(男性19.8%、女性25.%)。理想の胸がCカップで、DカップよりもBカップのほうが人気が高いというのは確かに意外かもしれないがいかがだろうか。
参考:「Taylor&Francis Online」、「Nature」、「ZAVA」、ほか
文=仲田しんじ
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