ほんの少し外向的にふるまうことで得られる4つのメリット

サイコロジー

 円滑な業務を行なうためにはやはり外向的にふるまうべきなのだろうか。最近の研究では実際のビジネスに現場で、外向的な言動が何かと有利に働いていることが指摘されている。そのアドバンテージは4つもあるということだ。

■外向的にふるまうことで得られる4つのメリット

 仕事の環境は職場によりけりではあるが、そこで働く者は外向的にふるまったほうが周囲におおむね好印象を与え、また当人のパフォーマンスも向上することが最近の研究で報告されている。

 カナダ・トロント大学の研究チームが2019年5月に「Journal of Applied Psychology」で発表した研究では、これまでに発表されている91本もの研究論文をメタ分析することで、外向的な性格特性と仕事の関係を探っている。結論から言えば、やはり外向的なふるまいと言動は、職場環境とパフォーマンスに好影響を及ぼしていることが示されることになった。

 外向的な性格特性は具体的には、目標達成へのより強いモチベーション、仕事の満足度、より優れたコミュニケーションスキル、より良い作業パフォーマンスの4つの項目でアドバンテージを有しているということだ。

 オープンな性格で外向的な人物が仕事で成功を収めやすいというのは、ある意味ではイメージ通りということになり、自分が内向的だと自認している向きにとっては肩身の狭い思いがする話題になるかもしれない。しかし研究チームによればそうした心配はあまりないという。

 そもそも極端に外向的であったり内向的であったりする人物は少ないのであって、たいていは“程度問題”である。自分がやや内向的だという自覚があるなら、職場ではほんの少し外向的にふるまうことで“修正”できるのだ。

 また内向的な人は、聞き上手で思慮深い意思決定を行なう傾向もあり、わずかばかりに外向的にふるまうことでこれらの長所もより引き立つことになる。決して無理することなく、自然に行なえる範囲で明るく外向的にふるまってみたいものだ。

■低収入の外向的人物に浪費リスク

 ビジネスの現場においては多少は明るく外向的にふるまいたいものだが、自分は外向的であると認めている場合は少しばかり注意が必要かもしれない。それは過分な出費のリスクだ。

 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが2017年8月に「Psychological Science」で発表した研究では性格特性と消費習慣の関係について探っている。

 実験参加者であるイギリス人718人は、その消費行動を12カ月間にわたって追跡され、それぞれの年齢、収入、ローン残高、社会的地位などのプロフィールが特定された。そしていわゆる“ビッグ5”などの性格特性を浮き彫りにするテストもまた課された。

 収集したデータを分析したところ、低収入で外向性が高い人物に、分不相応なショッピング履歴が多い顕著な傾向が明らかになったのだ。たとえばファッションについて言えば、実際の社会的地位よりも高い地位に見える服装と服飾、つまりは高級ブランドを購入しているという。

 そのほかにも海外旅行、必需品以外の家電製品、ゴルフ、アートなどについても身の丈に合わない出費をしているということだ。その一方で安さが売りのディスカウント店や中古品ショップなどはあまり利用していないという。

 では低収入の外向的人物はどうして収入に見合わない多額の消費をしてしまうのか。研究チームによれば彼らは“埋め合わせ消費(compensatory consumption)”をしているのだという。収入の低い外向的な人物は、同程度の収入レベルの内向的な者よりも“不足感”をより強く感じているという。この“不足感”を埋め合わせるため、現在の自分の地位よりも1、2ランク高いステイタスの消費行動を取っているのだと説明できるという。

 ある意味で見栄を張り、背伸びをしていることになるが、分不相応な消費を続けていればさまざまな問題をはらんでくるだろう。自分が外向的だと思える向きには消費行動に注意が必要であるようだ。

■孤独好きが内向的というわけではない

 外向的な人物に潜む思わぬ経済面での落し穴が指摘されているのだが、外向的な人物はいつも人々の間にいるイメージもあり付き合いにもお金がかかるのかもしれない。

 いつも人の輪の中にいそうなイメージのある外向的人物だが、意外なことに最近の研究では外向的な人物であってもその中には1人の時間を楽しんでいる者も少なくないことが報告されている。そもそも、孤独を好む傾向に外向的、内向的という性格特性はあまり関係ないというのだ。

 米・ロチェスター大学をはじめとする合同研究チームが2018年8月に「PsyArXiv」で発表した研究では、孤独を好む性格特性は、自分で自分の人生をよりコントロールしたいという“自律性”の高さに由来するものであることを報告している。

 実験の1つでは、参加者は1日15分間、完全に孤独な状態で合計7日間過ごし、その時間でどのような体験をしたかについて詳細な報告をした。各参加者は事前に性格特性を測るテストも行なっていたのだが、内向的、外向的という性格特性を越えて、自律性の気質が強い人物ほど孤独な時間をポジティブに楽しんでいることが突き止められたのだ。

 自律性が高い人は「私の決断は私の最も重要な価値観や感情を表している」や「私が感じた恐怖感や不安感について興味がある」などの文言に同意し、“建設的な孤独(constructive solitude)”の時間の中で自身の自律性や有能性を満足させているのである。

 また「愛着スタイル(attachment styles)」で浮かび上がる性格特性でも孤独好きな人物像が特定された。それは“回避型”の人物で、彼らは1人でいることを望みその時間を大切にしているのだが、必ずしも孤独な時間を楽しんでいるわけではなく、過去をくよくよ振り返るネガティブな感情も味わっているという。そしてこうした人物は往々にして内向的な人物と見なされることが多いのだろう。

 ともあれ孤独が好きだからといって一概に引っ込み思案であるとかシャイであると見なされる謂れもないのであり、堂々と1人の時間を建設的に、そして有意義に楽しみたいものである。

参考:「APA PsycNet」、「SAGE Journals」、「PsyArXiv」ほか

文=仲田しんじ

コメント

タイトルとURLをコピーしました