ふんわりさせるのがカギ! “幻の満腹感”を引き起こすミルクセーキダイエットとは?

サイコロジー

 砂糖をたっぷり使ったドリンクに税金を課す“ソーダ税”や、健康に悪影響を与えるメニューに課税する“ジャンクフード税”などがWHO(世界保健機関)の呼びかけによって各国、各地域で導入されている。さらに導入が進むのか、また実際の効果はどれほどのものなのか、まだしばらくは今後の動きを見守ることになるが、その一方で砂糖の減量や摂取カロリーの削減についての研究は根強く続けられており現在もさまざまな“妙案”が登場している。

■飲食店のドリンク消費量を減らす有効“トリック”

 過食などが原因の肥満や2型糖尿病の増加は世界的な懸念になっている。たとえばイギリスの公衆衛生サービスは、砂糖の使用を控えたシュガーレス食品や、完全に砂糖を排除したシュガーフリー食品、そして人工甘味料の摂取を推奨している。しかしこうした推奨はあまり功を奏していないようで、人工甘味料やシュガーレス食品は、食欲のコントロールを混乱させるため、結果的に摂取カロリーを増やしてしまうという本末転倒の効果が起り得ることも指摘されている。

 食生活をあまり変えずに砂糖の摂取量を削減するのはなかなか一筋縄ではいかないようだが、それでも今もなおさまざまなアイディアが考案されている。

 アメリカのハーバードビジネススクールとペンシルべニア大学の合同研究チームが先日、心理学系学術誌「Psychological Science」で発表した研究は、外食店舗においてソーダやコーラなどの砂糖入り清涼飲料の消費量を低下させる“トリック”を紹介している。

 アメリカのファストフード店や映画館でドリンクを注文したことのある人はご存知の通り、Lサイズの容器がとてつもなく大きい。マクドナルドを例にとれば、アメリカの店舗ではLサイズが1リットル近く(946ml)あるといわれている。ちなにみに日本の店舗でLサイズは420mlだといわれている。

 実験のひとつでは、このLサイズの容器を使わずに、もしLサイズを注文した場合はMサイズのカップ2つで提供する方式にしたところ、Lサイズを注文する客が減ったということだ。やはりLサイズの容器があるからこそ、Lサイズを選んでいる客が一定数はいるということだろう。

 また、アメリカの外食チェーンではソフトドリンクを購入すると店内にいる限りは飲み放題(free refills)というシステムをとっている店も少なくないのだが、この場合店員がお代りをいつも用意してすぐに注いでくれるケースではドリンクの消費量が増えるのだが、自分で注いでくるドリンクバー方式にすれば同じ飲み放題でも消費量はあまり増えないということだ。

 やはりカップの大きさはドリンクの消費量に影響しており、自分が動かなければならないセルフサービスは面倒であると感じている客が多いということになる。

■低カロリーでも腹持ちが良い“幻の満腹感”とは

 まとまった仕事などでしばらく食事を摂る時間がない場合など、“腹持ち”の良いものを食べるようにとアドバイスされたことはないだろうか。つまり“腹持ち”の良いものを食べれば、空腹感の訪れを先延ばしにできるのだ。

 実際に胃の中に長く留まる食べ物もあれば、ドリンクなどのようにすぐに胃から排出される摂取物もある。しかし満腹感は単純に胃の中の出来事だけではないことが指摘されている。

 オランダ・ヴァーヘニンゲン大学の研究チームが昨年に発表した研究では、ミルクセーキを飲んでもらい胃の中の様子をチェックすると共に、現在の満足感を自分で評価する実験を行なっている。参加者の15人の男性は、2種類のミルクセーキを飲んでその後の満足感を10分きざみで食後90分まで報告して記録した。

 ミルクセーキは混ぜ方によって、クリームに近い状態にもできるが、実験では100キロカロリーのミルクセーキをふんわりとした状態にして、もう一方で500キロカロリーのミルクセーキをあまり混ぜずに水っぽい状態で提供した。こうした混ぜ方の違いで、カップに入れた2つのミルクセーキの見た目は同じようなボリュームになったということだ。

 カロリーで5倍もの違いがある2つのミルクセーキだが、食後の満腹感にほとんど違いがなかったということだ。MRIを使って胃の様子をチェックした結果は、500キロカロリーのミルクセーキのほうが確かに“腹持ち”がよくて、100キロカロリーのものよりも長く胃に留まっていた。しかし各人の実感としての満腹感にあまり違いはなかったのだ。

 そればかりではない。40分が経過した時点の満腹感の自己評価において、500キロカロリー版では100満点中平均48点だったのが、100キロカロリー版では平均58点と、なんと100キロカロリーのミルクセーキのほうが満腹感が長続きしていたのである。

 研究チームは100キロカロリー版のミルクセーキのふんわりした食感が満腹感に影響していると考えており、これを“幻の満腹感(phantom fullness)”と名づけている。低カロリーの食品で“腹持ち”が良いとなれば、減量法の開発には大きな可能性が拓かれていることになる。ミルクセーキのほかにも、幻の満腹感を得やすいメニューがあるのか気になるところだ。

■奇抜すぎる6つのダイエット法

 良い意味で自分の心とカラダを“欺く”ことで精神面で無理することなく低カロリーな食生活が送れるのだとすれば手放しで歓迎すべきだろう。最近はこうした心理学的な“奇策”を弄してダイエットに結びつける手段もいろいろと考えられている。健康情報サイト「SELF」が、そうした奇抜でありながらも実際に効果があるというダイエット方法を6つ紹介している。

●スナック菓子といえども食器に盛り付けてハシやスプーンやフォークで食べる
 チートスやポテトチップ、ポップコーンなどのスナック菓子でも、袋から皿に移してハシやフォークやナイフを使って食べることを心がける。そしてなるべく時間をかけて食べることで、良く味わい満足感を高め、食べ過ぎを防ぐことができる。テーブルナプキンなどにも凝ってみるのも、1回1回の食事を尊重することになり過食を防止する。

●外食は現金払いで
 外食や食品のテイクアウトをする場合は現金で支払う。電子マネーやクレジットカードを利用するよりも、現金で払うほうがお金の使い方により意識的になれる。外食の際には現金で払うことを心がけることで、メニューに対してより健全な判断ができるということである。

●「下を向いた犬のポーズ」をとる
 ヨガのポーズのひとつである「下を向いた犬のポーズ」(Downward Dog)は、メンタルの満足感を高める効果があるといわれ、食事の前などに行なうことで食べ過ぎを防ぐことができるということだ。つまり生活の満足感において食事が占める割合が減るということだ。

●週に1度はお坊さん(聖職者)になる
 週に1度くらいは、お坊さんのようにストイックに静寂の中で食事をする。テレビを消し、スマホなどの情報機器を排除した静かな環境で、まさに精進料理を食べるようにしてゆっくり食事をする。もちろん、新聞を眺めたりパートナーとおしゃべりをすることもこの際には厳禁だ。食事に意識的になりよく味わうことができて、食べ過ぎを防ぐことができる。

●独り言を言いながら食事をする
 例えば「今から○○を食べます」など、自分に言い聞かせながら食事をする。そのメニューについてどこが美味しいのか、どうして好きなのか、など食について思いつくままに口に出してみることで、惰性で食べがちな食事に意識的になれる。無理に食欲を抑えこむことはないが、実際に食べたものを確認することで過食を防止できる。

●最初にオレンジを食べる
 食事の最初にオレンジなどの手がかかる果物を食べることを習慣づける。手作業が必要なものを最初に食べることで、食事に対して意識的になれる。最初にオレンジの皮を剥いたりすることで食事がスローペースになり、先に果物を食べることで満腹感が早く訪れるということだ。

 ポイントはやはり、自覚的な食事を心がけることに尽きるのだろう。時間に追われる中での“ながら食い”や“早メシ”などは、ややもすれば何を食べたのか忘れてしまうことさえあり得るだろう。ゆっくり食事に時間をかけられないの場合は、いっそのこと栄養補助食品などでその場を凌いで、その次の食事をゆっくり味わうという選択もありそうだ。

参考:「SAGE Journals」、「Oxford University Press」、「SELF」ほか

文=仲田しんじ

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