友だちもそれなりにいるし、毎日仕事で多くの人と会っているのに、ふとした時に孤独を感じる瞬間もあるだろう。それはひょっとすると実際に孤独な状況にあるということなのかもしれない。こうした本人にも気づきにくい“見えない孤独”を示すサインがあるという。
■“見えない孤独”を気づかせる7つのサイン
アメリカ・シカゴ大学心理学部が定義した“孤独”とは「人間関係における理想と現実のギャップから生じる苦悩」である。何かのきっかけで、親しい関係にあると思っていた人物が意外にも冷淡であることが分かったときなどに、失望を抱いて孤独感に繋がる。しかし平時の状況においては、孤独は気づきにくいかもしれない。そこで科学的に裏打ちされた孤独を示す7つのサインがあるという。
1.ショッピングが多い
2013年に発表された研究では、2500人の人々の生活と行動を6年間にわたって追跡した調査で、孤独な人はモノを所有することに強い欲望を持っていることが指摘されている。社会的な繋がりを欠いていると感じている人々は、物質主義に走りショッピングの回数が増えるということだ。
2.連続ドラマ好きである
米・テキサス大学オースティン校の研究チームが2015年に発表した研究によれば、無意識的にであれ孤独を感じている人は、何本ものテレビドラマを習慣的に大量に観賞する傾向があるということだ。ドラマの展開に夢中になることで孤独感やうつ気分を紛らわせるためであると説明している。
3.疲れや眠気をあまり感じない
2011年に米・サウスダコタ州で行なわれた研究では、100人の人々の睡眠パターンと孤独感と不安感の関連が探られている。その結果、孤独や不安を感じている人ほど長く起きていて、分断的な短時間睡眠を繰り返していることが浮き彫りになった。不安に対処するためになるべく長く起きていようするためであると考えられるが、このメカニズムの詳細はまだよくわかっていない。
4.シャワーや入浴の回数が多く時間も長い
2013年の研究で、孤独を感じやすい人は入浴の回数と時間が長いことが判明している。孤独はまさに“寒い”ということになる。
5.風邪をひきやすい
米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の2012年の研究では、孤独は免疫力の低下に結びついていることが指摘されている。そのため風邪をひきやすいということだ。
6.孤独な友たちが多い
2010年に米・シカゴ大学のチームが発表した研究では、孤独な人は同じように孤独な友人を持っていることが指摘されている。類は友を呼ぶということなのか、孤独は“感染”するものであるという主張も行なわれている。
7.うつな気分になる
孤独は気分障害やうつに密接に結びついているといわれ、最悪のケースでは本当にうつを発症してしまう。
自分が孤独であるという現実を認めたくない向きもあるだろうが、後で大きな失望をしないためも、時には自分の孤独さを確かめてみてもよさそうだ。
■孤独でみじめだと感じている人のほうが多い!?
では普通の人々はどれくらい孤独を感じているのだろうか。最近の研究では、多くの人が実際よりも孤独でみじめであると感じていることが浮き彫りになっている。孤独を感じない人のほうが少数派かもしれないのだ。
米・スタンフォード大学の研究チームが2010年に発表した研究では、4つの調査を行なって人々が他者のネガティブな感情をどうのように認識しているのかを検証している。
最初の調査では、ポジティブな感情に比べてネガティブな感情はより個人的で隠されたものであると人々が認識していることがわかった。
続く調査では、友人や同僚といった近しい関係にある他者が表現しているネガティブな感情を、実際より過小評価する傾向があることがわかった。つまり同僚が発する不平や不満などが、あまりたいしたものではないと感じているのだ。悪く言えば親身になってないということである。
またこれとは逆に友人や同僚のポジティブな感情表現には、実際以上の過大評価をしがちであることもわかった。つまり友人が最近体験した楽しいアクティビティなどは、実状以上に羨ましく思えてくるのだ。
しかし同僚がネガティブ感情であれポジティブ感情であれ、控えめに表現した場合、この認知のメカニズは弱まることもわかった。
そしてこのように、他者のネガティブ表現を親身に受け止めないという姿勢は、当人に孤独感や沈黙行為をもたらして生活上の満足感を低下させ、他者のポジティブ感情を過大評価することでさらに自分の生活がみじめなものに感じられてくるということだ。したがって一般的な傾向として、我々が思っているよりも人々の間に孤独感や不満足感は広まっているということになる。傍から見ていつも楽しそうにしている人物であっても、その本当のところはわからないと思ったほうがよさそうである。
■皮肉にもSNSが若者の孤立感を深めている
SNS全盛の時代を迎えているが、より多くの人々を結びつけ、社会参加を促すはずのSNSが皮肉にも若者たちの間に社会的孤立感を広める原因の一端になっていることが最近の研究で報告されている。
米・ピッツバーグ大学健康科学部のチームが2017年3月に発表した研究では、SNSを利用する時間が長い若者ほど、より深刻な社会的孤立感を抱いていることが指摘されている。もともとは場所や時間に縛られることのない交流を促進し、ある種の人々にとっては孤独を埋め合わせるものになると期待されていたSNSが、実は逆に孤立感や孤独感を深める作用を及ぼしているとすれば皮肉以外の何物でもないだろう。いったいどういうことなのか。
2014年にSNSユーザーであるアメリカの大学生(19歳~32歳)1787人に対して行なったアンケート調査を詳しく分析することでこれらのことがわかったのだが、もともと孤立感を感じている者がSNSを頻繁に利用しているからなのか、それともSNSを長時間利用することで社会的孤立感を深めてしまうのか、どちらが先にくるのか詳しいことはまだわからないということだ。それでも、この現象を説明でき得る3つのポイントを挙げている。
●SNSでの活動時間が長くなるほど、当然ながら現実の社会生活と人的交流の体験が少なくなり孤立感が強まる。
●SNS上で交流のある人物が、現実世界の友人との深い交流をあらわす写真を投稿したりするなどした場合、疎外されている感覚が強まる。
●SNS上で交流のある人物が、理想的と思われる生活上のアクティビティの写真などを投稿した場合、羨ましい感情が引き起こされ、自分以外の他人がより幸せで成功する人生を歩むという自己卑下に繋がる歪んだ固定観念を定着させてしまう。
レポートでは今後のさらなる研究が必要だとしていながらも、SNSの利用時間の長さと社会的孤立感は相互作用がある可能性を指摘し、たとえ社会的孤立感を抱く者がSNSを利用しがちであるという実態があるにせよ、当初想定されていたようにSNSが孤独を解消するという希望的観測はまったく功を奏していないことがおおむね明らかになったと言えそうだ。もちろんSNSは多くのユーザーにとって有益なコミュニケーションを提供するものではあるが、突き詰めれば現実の人間関係となんら変るものではないことを今一度確認したい。
参考:「Bustle」、「SAGE Journals」、「University of Pittsburgh」ほか
文=仲田しんじ
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