なぜ女性はワンナイトラブで後悔しやすいのか?

サイコロジー

 これまでの人生で最も後悔しているのはどんなことだろうか。具体的にはいろいろな種類の後悔があると思うが、最新の研究では人々の最も大きな後悔は“理想の自分”になれていないことであるという。

■人生最大の後悔の76%が“理想の自分”になれなかったこと

 米・コーネル大学とニュースクール大学の合同研究チームが2018年5月に学術ジャーナル「Emotion」で発表した研究では、6つの実験を通じて人々の後悔の実態と実像を探っている。調査に回答した実験参加者は数百人にも及んだ。

 研究によれば人間の自己認識は3つに分類できるという。1つはありのままの自分、2つめはそうであるべき自分(ought self)、3つめは理想の自分(ideal self)である。ありのままの自分は失敗を素直に認められるが、残りの2つでは失敗や未達成、不履行は後悔に繋がる。

 研究チームが回答を分析したところ、人々を後悔させる出来事の72%が理想の自分に関わるもので、28%があるべき自分に関わるものであった。またこれまでの人生で後悔したことをリストアップした回答では、57%が理想の自分に関わるもので、43%があるべき自分に関わるものであった。さらに人生最大の後悔については、76%が理想の自分に関わるもので、24%があるべき自分に関わるものであった。

 理想の自分に関わる後悔とは例えば、目指していた職業に就けなかったり、外国語や楽器の習得に挫折したことなどが挙げられる。一方、あるべき自分に関わる後悔は例えばスケジュールの手違いで冠婚葬祭に出席できなかったり、困っている人を見かけたが素通りしてしまったことなどだ。そして研究結果からは、人々は理想の自分に関わる後悔をはるかに深刻に受け止めていることが明らかになった。

 なぜ理想の自分に関わる後悔がより深刻に感じられているかについてはまだよくわかっていないのだが、あるべき自分についての後悔が具体的なものであるのに対し、“理想の自分”についてはイメージ的な要素も多く抽象度が高いことがその原因の一端ではないかということだ。

 研究チームは夢や理想に触発されたならばあまり考えず、いつからでも遅くはないのですぐに実行に移すことを提案している。まさに“後悔先に立たず”を地で行く研究結果である。

■なぜ女性はワンナイトラブで後悔しやすいのか?

 男女の出会いとセックスに後悔はつきものという感もあるが(!?)、これまでの研究では、カップルの性行為ではないカジュアルセックスにおいて、女性のほうが後悔するリスクが高いことが示されている。

 学術ジャーナル「Personality and Individual Differences」で2018年2月に発表された研究はこのテーマをさらに深く掘り下げた内容だ。ノルウェー科学技術大学と米・テキサス大学オースティン校の合同研究チームは、ノルウェー人の大学生547人とアメリカ人学生216人を対象にインタビューを行い、カジュアルセックスに対する認識を分析した。

 分析の結果、カジュアルセックスの認識に影響を及ぼす6つの近接要因(proximate factor)があぶり出され、そしてやはりカジュアルセックスに対して男女の認識に違いがあることが浮き彫りになった。

 カジュアルセックスの印象を左右する6つの要因とはそれぞれ、懸念(worry)、強要感(pressure)、嫌悪感(disgust)、性的な満足(sexual gratification)、相手の性的有能性(sexual competency of partner)、主導権(initiative)である。懸念と強要感、嫌悪感が最も強く後悔に結びつき、一方で性的な満足と相手の性的有能性、主導権は後悔を生じさせ難くしていることが判明した。

 したがって女性がカジュアルセックスで後悔しやすいというのは、女性のほうが懸念と強要感と嫌悪感を感じる可能性が高く、性的な満足や主導権を得難いことからきていると説明できるのだ。

 女性がカジュアルセックスにおいて後悔しないために特に重要なのが主導権であると研究チームのデイビッド・バス教授は語る。

「まず第一に(女性が主導権を握ることは)心理学的に健康な快適さとセクシュアリティを最大限に高められます。二番目に主導権を握った女性は自分から性的な満足を追い求めることができます。すべては自分が選択したことなので、結果的に後悔をする理由がなくなるのです」(デイビッド・バス教授)

 そしてもちろん、相手の男性の性的能力と技巧が高かった場合も女性は後悔をしにくくなる。一方で男性の場合は相手の女性の性的能力はあまり性的な満足度に影響を及ぼしていないこともわかった。いずれにしても後で残念な思いをしないためにも、カジュアルセックスについてはいろんな部分で女性主導であったほうが良さそうだ。

■イッキ見するとドラマの楽しさが半減する!?

 セックスよりもさらに身近な後悔のタネにドラマの“イッキ見”があるというから注意が必要だ。イギリスとカナダの合同研究チームが2016年に発表した研究では、テレビや動画の長時間視聴が及ぼす健康への影響を探っている。

 ネットのストリーミング配信サービスが充実した昨今、気になるドラマをいつでもイッキ見できてしまうという便利な時代になったが、健康面への影響も懸念されてくる。

 研究チームは86人の参加者にオンラインで映像作品の視聴に関する一連の質問に回答してもらい収集したデータを分析した。この質問で測定されたのは、物事がそつなくこなせるという自己効力感(self-efficacy)、近接目標(proximal goals)、結果予期(outcome expectations)、予期的後悔(anticipated regret)、カチッサー効果(automaticity)、目標間葛藤(goal conflict)、目標達成容易化(goal facilitation)であり、回答に加えて先週の総視聴時間を報告してもらった。

 回答を分析した結果、長時間視聴やイッキ見は、それが計画的なものであれ衝動的なものであれ、今日の人々の生活の中で普通に行なわれている実態が浮き彫りになった。参加者は平均して週に1.42日、1日を潰してしまうような長時間視聴を行なっている。そして視聴時間の長さによって、結果予期、予期的後悔、カチッサー効果、目標間葛藤が説明できることが示唆されることになった。

 予期的後悔とはこれから行なう選択で失敗したときにどの程度後悔するかを予め見込んでみることだが、視聴時間が長くなるほどに作品があまり面白くなかったときに強く後悔することが予期されてくるのである。つまりイッキ見において「もう1話」と視聴を重ねる度に、期待はずれだった時のショックは大きくなるのだ。そしてもちろん、睡眠時間など長時間視聴で犠牲になるものも少なくない。

 もちろん楽しいからこその連続ドラマの視聴だが、欲張り過ぎてイッキ見すれば楽しさは半減するかもしれない。また長時間視聴で睡眠時間を削るようなこともしたくないものだ。

参考:「Cornell Chronicle」、「ScienceDirect」、「NLM」ほか

文=仲田しんじ

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