ブラックで飲むコーヒーがもたらす6つの科学的な効能

サイエンス

 賛否両論が巻き起こる“食”関連のメジャーな案件のひとつがコーヒーだ。たっぷりと砂糖を入れたコーヒーを1日何杯も飲めばカラダに悪いに決まっているが、コーヒーそのものについてはカラダに良いものであるという支持派の見解が昨今また増えているようである。

■コーヒーで脱水症状を引き起こすことはない

 世界中で飲まれているコーヒーだが、その心身への効能についてはさまざまな見解がある。コーヒーがカラダに悪いという意見もあるのだが、その多くはコーヒー自体の問題ではなく砂糖の摂取量の問題であったり、また最近はコーヒーフレッシュの成分の危険性がよく指摘されるようになっている。

 コーヒーに含まれるカフェインのデメリットとしてよく槍玉に挙げられるのが利尿作用である。この利尿作用によって必要以上にカラダから水分が抜けてしまい、特に夏場などでは脱水症状のリスクが高まることが危惧されているのだ。

 しかしそうしたリスクは実は90年も前の研究で否定されていたことがわかっている。つまりコーヒーのカフェインで脱水症状になることはまずありえないということだ。

 1928年に発表された研究では、最低2ヵ月以上カフェインを摂取していない者はコーヒー1杯程度のわずかなカフェインを摂っただけで利尿作用を引き起こし、排泄によってカラダの水分量は確かに低下することが確認されている。しかしその一方で、日常的にカフェインを摂取している者は、あたらめてコーヒー1杯を飲んだところで、カラダの水分量にほとんど影響がないことも判明した。つまりコーヒーやお茶などを常飲している者にはカフェインによる脱水症状のリスクはないということである。

 また2005年に米・コネチカット大学の研究チームが発表した研究では、59人の健康な実験参加者を11日間にわたってモニターし、カフェイン飲料の摂取と体内水分量の関係を探っている。その結果、コーヒーなどの日常的なカフェイン飲料の摂取と体内の水分量に関係がないことを報告している。

 コーヒーの“容疑”は晴れたということになりそうだが、一方で人工的にカフェインを加えたエナジードリンクなどのリスクはこの限りではないかもしれない。カフェインはくれぐれも天然由来のものから摂取したいものだ。

■コーヒーは長寿に繋がる

 コーヒー愛飲家への朗報はまだ続く。2017年1月に米・スタンフォード大学医学部から発表された研究によれば、コーヒーは長寿に繋がるというのである。

 研究では100人以上の幅広い年齢層の生活習慣と血液サンプルを分析した結果、カフェインには人体の抗炎症作用を向上させる働きがあり、加齢に特有の各種疾病を予防できることを指摘している。

 コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料を日常的に頻繁に飲んでいる老齢者の血液の炎症反応が低い傾向にあることが浮き彫りになったのだが、日に1、2杯ではそれほど差はあらわれず、1日5杯以上飲むグループに顕著であったということだ。

「加齢が進むとなりやすい疾病のほとんどは“老人病”ではなく、炎症による疾病なのです。より多くカフェインを摂取する人ほど、慢性的炎症反応に抗うことができます」と研究を主導したデイビッド・ファーマン氏は「TIME」誌の取材に答えている。

 人体の細胞間の情報伝達を行なっている分子にアデノシンがあるが、カフェインはこのアデノシンの働きを抑制し、その結果、炎症反応を妨げるということだ。そして炎症反応が妨げられることで、免疫機能の働きが健全に保たれ、加齢の進行が緩やかになるということである。つまりカフェインの摂取が長寿に結びつくのだ。

「老化によって炎症反応への対抗力が衰えます。しかし今回の研究によって、炎症反応を引き起こす“通り道”を特定することができました。そして老化と炎症反応に対処する有望な解決策が打ち出されることになったのです」と研究チームの一員であるマーク・デイビス氏は語る。

 同研究チームによって今後さらに詳細な研究が行なわれる手筈になっているが、アンチエイジングの有力候補にカフェインが一躍名乗りをあげたことになりそうだ。

■コーヒーがもたらす6つの科学的な効能

 さらにコーヒーへの支持票は増えているようだ。シンガポールのビジネス系フォーラム「Responsible Business」の記事ではコーヒーがもたらす6つの科学的な効能を解説している。

1.うつと自殺リスクの低減
 カフェインは脳の中枢神経系を刺激し、神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの分泌を活発にして気分を高める。ハーバード公衆衛生大学院の研究ではコーヒーを1日4杯以上飲む女性は、そうでない女性よりもうつになるリスクが20%低くなるということだ。

2.長期にわたって脳を健康に保つ
 いくつかの研究において、コーヒー常飲者はそうでない者に比べてアルツハイマー病の発症リスクが65%も低いことが報告されている。

3.2型糖尿病の予防
 全世界で3億人が罹患しているといわれ全人類的な問題となっている2型糖尿病だが、コーヒーなどのカフェイン飲料で予防することができる。カフェインはインシュリン感受性を改善し、ブドウ糖摂取時に血糖値を一定に保つ耐糖能の機能低下を防止して2型糖尿病を予防するということだ。

4.虫歯予防
 砂糖やミルクを加えないブラックコーヒーは虫歯を予防しているという研究が2009年に発表されている。

5.エネルギーレベルを上げる
 神経の働きを抑制しているアデノシンの働きをカフェインが抑えこむので、結果的に中枢神経系を興奮させ、眠気覚ましや疲労感の軽減、計算や記憶能力の向上などをもたらす。さらにノルアドレナリンの放出量も増えて身体活動を活発にする。

6.脂肪を燃焼する
 カフェインには脂肪の分解を促進する効果がある。特に焙煎されていないコーヒー豆で淹れたグリーンコーヒーは脂肪燃焼効果が高い。

 これからも安心してコーヒーを味わいたいものだが、やはりできればブラックでコーヒーを楽しむのがカギのようである。

参考:「Science Alert」、「TIME」、「Responsible Business」ほか

文=仲田しんじ

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