「定年70歳時代」に突入! 老化を食い止め“スーパー老人”になる方法とは?

サイエンス

「定年70歳時代」を迎えた今日、どのように老化に対処していけばよいのだろうか。

■ぜひとも対処したい4つのエイジング症状

 白髪や老眼、肌の張りの低下など、自他共に老いを意識させる兆候がいくつかあるが、ぜひとも対処したい初期の老いのサインとなる4つの症状がある。

1.手のケア
 ボディパーツの中で最も早く加齢を反映するのが手である。加齢と共に皮膚がコラーゲンを失い張りがなくなり皺が増えるのだ。

 手の劣化を食い止める方法は、手に気を配ることほかならず、なるべく手をむきだしのまま露出しないことである。普段からハンドクリームを使い、洗い物などの際にはゴム手袋の使用を心がけることに尽きる。

2.生え際の後退を食い止める
 頭髪について多くが脅威に感じているのは、白髪よりも生え際の後退と薄毛だろう。加齢によってある程度は仕方ないものではあるが、気になった初期の段階で原因となっているものを洗い出す検証をしてみたい。

 生活上のストレスや食事、シャンプーや整髪料など、髪にまつわるあらゆるものを検分してみることで症状の進行を食い止められる可能性が高まる。

3.飲酒習慣を考え直す
 生活習慣としてタバコに次いで老化を促進していると考えられているのが飲酒習慣だ。アルコールは体内の水分を尿として必要以上に排出してしまうので、肌が乾燥して皺ができやすくなるといわれている。飲みすぎた後や二日酔いの朝には、無性に水が飲みたくなることでも身体から水分が失われていることがわかる。

 若いうちならまだしも、加齢を実感する歳になった際には飲酒の習慣を見直してみることが老化を食い止めるためには必要とされている。具体的には酒量を減らしたり“休肝日”を設けるなどの対策が有効だろう。また酒の種類についても、一部の甘いカクテルやジュース割りやコーラ割りのような、砂糖が多く含まれたアルコールメニューは避けるべきだ。

4.脂肪太りを回避するために筋トレをはじめる
 いわゆる“老け顔”ならしめるのは皮膚の乾燥に加えて、皮膚のたるみも大きな要素だ。皮膚のたるみは顔よりもまず先に腕にあらわれるといわれている。いわゆる二の腕のたるみだ。

 中高年以降の皮膚のたるみを食い止めるのが筋力トレーニングである。ランニングなどの心肺系の持久運動は皮膚のたるみの改善にはあまり効果がないということである。むしろ屋外でのランニングは肌を長時間外気と紫外線に晒すことになるため、皮膚のためには注意が必要だ。

 ジムでウェイトトレーニングを行なってもよいのだが、自室やオフィスで簡単にできる上腕三頭筋曲げ(triceps dips)なども有効なトレーニングであるということだ。

 上腕三頭筋曲げの例

 このような加齢の症状に早くから対処するのはいわば人生の“防衛戦”ともいえるのかもしれないが、戦うのと戦わないのとでは、その後大きな差が生じてくることは明らかだろう。

■1日10時間座りっぱなしでも30分の運動で老化リスク解消

 仕事でも生活でもパソコンやスマホをはじめとするデジタル機器の使用が全盛となっている今日、デスクで椅子に座る時間が長くなる傾向はもはや避けられないものになっている。デスクワークであるならば単純に仕事で8時間以上座り続けることになり、加えて食事やテレビ観賞などで椅子やソファに腰掛けていればもはや1日の大半を座って過ごすことになる。そこで問題になるのはやはり健康問題であり、老化の進行の問題である。

 昨今の学術的な知見では、人間を含む生物は例えば建物などのように“経年劣化”して老いるのではなく、遺伝子にあらかじめ老いて寿命を迎えるように“プログラム”されているのだという考えが主流である。そして遺伝子レベルでプログラムされた“老化”の進捗具合を示すバロメーターと考えられているのが、染色体の末端にある「テロメア」と呼ばれる構造体だ。このテロメアが、加齢とともに短くなり、残りの寿命を暗示するものになるといわれている。

 研究者たちは、このテロメアを短くする要因は単なる加齢だけではないと考えている。例えば運動不足や精神的ストレス、喫煙、肥満などがテロメアを短くする要素だと考えられているが、その中で“座りっぱなしの生活習慣”も大きな要因であるとされている。実際に調査によって1日10時間以上を座って過ごしている高齢の女性は、適度に動き回っている同い年の女性より8歳分も身体面の老化が進んでいるという研究が発表されている。

 とすれば、まだ若いうちから仕事でやむを得なく8時間も10時間も座っているというのは、人生のどこかの時点で老化が急激に進むリスクを背負っていることになる。つまりテロメアが一気に短くなってしまうのだ。

 だが、最新の研究ではデスクワークの仕事で1日10時間椅子に座るライフスタイルだとしても、毎日30分程度の運動を心がけることで、過度の老化を防止できるということだ。

 米・カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究チームが先頃、医学誌「American Journal of Epidemiology」で発表した研究によれば、1480人の高齢女性を調査することによって一日中座りっぱなしの人でも、30分の中程度からやや激しい運動をすることで、行き過ぎた加齢を打ち消すことができることを指摘している。

 これまでの研究では、すでにあまり動かない生活スタイルが定着してしまっている人が無理に運動するのはかえって身体に悪いのではないかという見解もあったのだが、今回の研究はやはり適度な運動は健康に有益であることが示唆されることになった。また今までの運動習慣や年齢に関係なく、はじめた運動はそれなりの効果を及ぼすということだ。いつから運動をはじめても遅くはないということになり、多くにとって朗報といえる話題ではないだろうか。

■20代の脳機能を保つ“スーパー老人”とは?

 超高齢化社会にあって多くの人が本腰を入れはじめた“アンチエイジング”だが、一方で高齢になっても若々しく脳機能の衰えがほとんどないという“スーパー老人”の存在が確認されている。

 スーパー老人の特徴は肉体的外見よりも、その脳の機能と構造にある。通常、加齢に伴って脳の大脳皮質などの質量が減少してくるものだが、60~80歳のスーパー高齢者の脳は一般的な18~32歳相当の脳の構造を保っているという。そして記憶力や認知機能も20代と同じ程度の働きを見せているのだ。

 どうしてスーパー老人たちの脳機能は衰えないのか? マサチューセッツ総合病院の研究チームはスーパー老人たちの脳をMRIを使って調べている。脳の中心部を覆うように存在している大脳皮質は、記憶や言語能力、知覚の機能に大きな役割を担っているといわれ、ほんのわずか“厚い”だけでも脳機能を大いに高めると見なされている。そしてこの大脳皮質は加齢と共に徐々に薄くなり、質量が減ることで認知機能の低下がはじまると考えられているのだ。

 分析の結果、スーパー老人といえども全体的には大脳皮質の質量が減ってはいるのだが、記憶と創造力を司ると考えられている大脳皮質の部位の厚みは、18~31歳の平均と同じくらいであることがわかったのだ。この発見によって研究チームは、脳の記憶に関わるネットワーク構造は、何らかの条件によって衰えなくなるか、あるいは衰え方をきわめて遅くできる可能性を示唆している。

 脳の老化を食い止める“条件”とは何なのか? おそらく運動や食事などが大きく関わってくるのだろうが、詳細については今後の研究の発展を待たねばならない。超高齢化社会の真っ只中にあって、エイジング研究にますます注目が集まっている。

参考:「Elite Daily」、「Psychology Today」、「Natural News」ほか

文=仲田しんじ

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